ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第10章)

アーサーとその息子・娘たち、それにハリーとハーマイオニーを入れて総勢十人は、ポートキーを使って早朝にウィーズリー家に戻る。行きも帰りも早朝だったのは、ポートキーによる移動をマグルに見られない用心なのだろう。

家の外では、モリーが心配しながら待っていた。
モリーは新聞で事件を知ったようだ。「みんな生きててくれた」とつぶやくモリーのせりふから、ヴォルデモートが復活して殺人を犯した可能性をモリーが考えていたことがわかる。

日刊予言者新聞には「クィディッチ・ワールドカップでの恐怖」という見出しの記事が出ていて、魔法省への悪口が書き連ねてあった。ここでリータ・スキーターの名前が登場する。ハリーが実物に会うのは18章になってからだ。
「…『闇の印』の出現からしばらくして、魔法省の役人が姿を現わし、誰も怪我人はなかったと主張し、それ以上の情報を提供することを拒んだ。それから一時間後に数人の遺体が森から運び出されたという噂を、この発表だけで十分に打ち消すことができるかどうか、大いに疑問である」
アーサーはこれを読んで言う。「事実、誰も怪我人はなかった。ほかになんと言えばいいのかね?」

リータがいじわるな書き方をする記者であることが、ここですでに示されている。
このあとリータは、「死の秘宝」にいたる時期まで、事実をゆがめたりいじわるな憶測を交えたりする記事を書き続ける。一時期だけ、ハーマイオニーに弱みをつかまれて書けなくなった時期はあったけれど。
ローリングさんは、マスコミに何か被害を受けて恨んでいるのかな? リータだけでなく、日刊予言者新聞そのものも、作品中ではあまりよく描かれていない。

ロンの部屋で3人だけになったとき、ハリーは夢のことをふたりに打ち明ける。ヴォルデモートとワームテールが誰かを殺す相談をしていたと。その「誰か」が自分だとは言わなかったのは、ハーマイオニーを怖がらせないためだった。

それから一週間、ハリーはウィーズリー家で過ごす。
モリーがダイアゴン横町に行って、みんなの教科書を買ってきてくれた。さっそく教科書を読みふけるのは、やはりハーマイオニーだ。
フレッドとジョージは羽根ペンと羊皮紙を手になにやら相談している。あとでわかるが、ルードからもらった賭けのお金が本物じゃなかったので、ルードに連絡をとろうとしていたのだろう。

パーシーとハーマイオニーは、ウィンキーのことで言い争いをする。
クラウチ氏がウィンキーを冷たく扱ったことが、正義感の強いハーマイオニーには、がまんならなかったのだ。ハーマイオニーはこれをきっかけに、屋敷妖精の権利のため活動するようになる。空回りではあったが、無駄だったとは言えない。

モリーが買ってきてくれたものの中に、パーティー用のドレスローブがあった。
ロンに買ったのは古着でダサいデザインのもの、ハリーのは新品でまともなデザインだった。ウィーズリー家はお金がないので、ロンには古着を買うほかなく、デザインを選べなかったのだ。
ロンの機嫌が悪くなる。この巻の前半ではロンとハリーが感情的に対立するが、これが始まりだったのかもしれない。