ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第14章)

この章の1ページ目に、「…今年で四年連続、スネイプはその職につきそこねた」と書かれている。
これは、客観的にはおかしい。スネイプはもう十年以上ホグワーツで働いているのだし、彼が「闇の魔術に対する防衛術」の教師の職を望んでいるのなら、四年ではなくその前からだろう。
原作者はどういうつもりでこの文を書いたのか。物語がハリー視点で書かれている、つまりハリー自身が、自分が入学した年からすべてが始まっているかのように錯覚している、ということだろうか。

ムーディの初授業の時間になった。
外見の不気味さにもかかわらず、ムーディーの授業は生徒たちに大きな期待を寄せられていた。先に授業を受けた上級生から評判を聞いていたからだろう。
自分の持ち時間は一年だけだとムーディーは最初に言った。この科目の教師は一年しか持たないことをダンブルドアが知っていたからか、それともムーディ自身が「一年だけなら引き受けよう」と言ったからだろうか。両方かもしれない。

ラベンダー・ブラウンが机の下で見ていた天宮図をムーディは注意した。ムーディの魔法の目は、机を通して中が見えるようだ。のちにハリーは、ムーディの目には透明マントが効かないことも知る。

ムーディーは「許されざる呪文」について話し始める。
彼に教師の経験があるのかないのか知らないが、授業の進め方はなかなか巧みだ。一方的に説明するのではなく、「最もきびしく罰せられる呪文は何か、知っている者はいるか」と生徒に質問して答えさせる。ビンズ先生はムーディのツメのあかでももらってほしいものだ

ネビルが手を上げた場面に、「ネビルが自分から進んで答えるのは、他の科目よりダントツに得意な『薬草学』の授業だけだった」と書かれている。ネビルの得意科目が出てくるのはここが初めてじゃないだろうか。

ムーディは「服従の呪文」「はりつけの呪文」「アバダケダブラ」を、クモを相手に実演してみせる。
ここでムーディは、アバダケダブラを使うには強い魔力が必要だという。「おまえたちがこぞって杖を取り出し、わしに向けてこの呪文を唱えたところで、わしに鼻血さえ出させることができるものか」というのだ。つまり、この呪文を口で唱えたからといって人を殺せるわけではない。
そりゃそうだろうな、と思う。いくら魔法界でも、そんなに簡単に人を殺せるはずがないものね。

授業のあと、ムーディはネビルに「おまえが興味を持ちそうな本が何冊かある」と言い、自分の部屋に連れていく。
食事のあと寮に戻ると、ネビルがムーディから借りた本を読んでいた。「地中海の水生魔法植物とその特性」という本だ。あとで考えれば、この本に鰓昆布のことが載っていたのだろう。ハリーがハーマイオニーのように本好きだったら、この本に目を通しただろうに。

ハリーとロンが占い学の宿題をやっていると、ハーマイオニーが外から戻ってきた。箱を持っていて、その中にはSPEWと書かれたバッジが入っている。ハーマイオニーは図書館でいろいろ調べた末、「屋敷妖精福祉振興協会」を作ることにしたのだ。

その時、窓をたたく音がした。ヘドウィグが戻ってきたのだ。足にシリウスからの手紙が結びつけてあった。
「すぐに北に向けて飛び立つつもりだ」と書かれている。「飛ぶ」というのは、ヒッポグリフに乗って来るという意味か?
ハリーはそれを読んだとたんに、軽率に手紙を書いたことを後悔する。シリウスが危険を冒そうとしているのは、自分のせいだと。
ハリーの反省自体は良いことだ。しかし、何日もの長旅をしてきたヘドウィグをやさしくねぎらうことをせず、冷たく扱ったことは、わたしには許せない。ヘドウィグは忠実に役目を果たしただけなのに。