ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第19章前半)

シリウスが指示した11月22日まで、2週間あった。その日にハリーが談話室にひとりでいられるよう、ハリーはハーマイオニーと長時間かけて相談した。
ハーマイオニーは、ハリーが望まず代表選手になったことも知っているし、ハリーに対して素直になれないロンの切なさも知っている。しかし持ち前の冷静さで、今はハリーの手助けをするのが最優先課題だと判断したのだろう。
リータ・スキーターが、ハリーが話してもいない記事をでっちあげ、そのせいでハリーとハーマイオニーは生徒たちにからかわれる。ハリーは例によってかんしゃくを起こすが、ハーマイオニーは冷静に受け流している。
もっともハーマイオニーは、ふたりを仲直りさせようという努力もしているのだが、自分の感情のままにしか行動できないハリーとひがみ根性にこりかたまったロンだから、うまくいくはずがない。

呼び寄せ呪文を習得できないハリーのために、ハーマイオニーは理論を学ぶようアドバイスし、ふたりは図書館をたびたび訪れる。なぜかビクトール・クラムも図書館によくやってくる。実はハーマイオニーと話したかったからだとわかるのは、23章になってからだ。
クラムは有名人なのに、気が弱く引っ込み思案な面を持っているらしい。18章で新聞用の写真を撮る時にも、みなの後ろに隠れがちだった。

土曜日、ホグズミード村へ行ける日が来た。ハリーはシリウスのおかげですでに許可を得ているが、ロンに会うのが嫌で透明マントを着ていった。ハーマイオニーもこんな時ぐらいハリーと別行動をすればいいのに、と読んでいて思った。
ハーマイオニーといっしょに「三本の箒」に入ってバタービールを飲んでいると、ムーディ(実は偽ムーディだが)とハグリッドが入ってくる。ムーディは「いいマントだな、ポッター」とささやく。透明マントは姿を隠してくれるが、ムーディの魔法の目はそれを見透かすのだ。魔法というのは、上には上があるのが普通らしい。
そこにハリーがいると知ったハグリッドは、真夜中に小屋へ来るようにと言う。

ハリーは言われたとおり、真夜中にハグリッドの小屋へ行く。
ハグリッドは「マントをかぶったままでついて来い」と言い、ボーバトンの馬車の方向へ歩く。
馬車のドアには金色の杖が交差した紋章がついている。Beauxbaton は「美しい杖」という意味らしい。
ハグリッドがそのドアをノックすると、マダム・マクシームが出てきた。ハグリッドは慣れないフランス語で「こんばんは」とあいさつ。
ふたりは禁じられた森の周囲を回り込んでかなり歩いた。ハリーはもう引き返そうかと思いながらもついていく。
そこでハリーが見たのは、4頭のドラゴンだった。30人ぐらいの男たちがまわりにいた。

ドラゴンが火を吐いて暴れるので、男たちがいっせいに失神呪文をかけた。ドラゴンたちがおとなしくなったあと、ドラゴン使いのひとりがチャーリー・ウィーズリーだとハリーは気づいた。
11章でチャーリーが「僕、みんなが考えているより早く、また会えるかもしれないよ」とハリーたちに言ったのは、このことだったのだ。

つまり、ハグリッドはホグワーツの職員として、第一の課題がドラゴンだと知っていた。
幼稚で単細胞の彼は、好意を抱いているマダム・マクシームと、自分がひいきにしているハリーに、こっそりドラゴンを見せようと思ったのだ。
もしかすると、それでハリーとフラーが有利になることまでは考えなかったのかもしれない。ドラゴン大好き人間のハグリッドは、自分が素敵だと思うドラゴンをハリーとマダム・マクシームにも見てほしいという、ごくごく単純な気持ちだったということもあり得る。

城へ戻ろうとして、ハリーはカルカロフにぶつかる。ハリーは透明マントを着ていたから、何にぶつかったのかカルカロフにはわからないままだ。
しかし、カルカロフがそこにいたことで、彼がドラゴンに気づくのはほぼ確実になった。マクシームはフラーに、カルカロフはクラムにドラゴンのことを話すだろう。
知らないのはセドリックだけ、ということになる。