ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第21章前半)

第一の試合が終わったその夜、ハリーとロンとハーマイオニーはふくろう小屋に行った。手紙をシリウスに送るためだ。
ゴブレットからハリーの名前が出たのはハロウィンの夜、10月31日だ。そして、第一の試合が行われたのは11月24日(この日付は、17章のクラウチ氏のせりふに出てくる)。3人がいっしょに行動するのは約3週間ぶりということになる。
ロンと仲違いしていた時期のハリーの心理描写があまりにもていねいに描かれていたので、ずっと長かったような印象を受けてしまった。

ハリーはピッグウィジョンに、重い手紙を託した。ピッグウィジョンは4、5メートル落ちて、それからなんとか舞い上がった。
3章では、重い荷物を運ばされたエロールがふらふらになるという描写がある。ふくろうに重労働をさせる場面が何度も出てきて、それを誰もたしなめないのは、読んでいて不愉快だ。イギリスは動物愛護運動がさかんな国なのに…
ま、この場面のピッグウィジョンは喜んでいたからまだいいけれど、老齢で仕事のあとは半死半生になるエロールは可哀想だ。

ピッグウィジョンを見送ったあと、ロンが「下に行って、きみのびっくりパーティに出なきゃ。フレッドとジョージが、いまごろはもう厨房から食べ物をどっさりくすねてきているはずだ」と言う。ロンは「くすねる(原文は nick)」という表現を使ったが、実は屋敷妖精たちが喜んで差し出したのだ、とあとでわかる。

グリフィンドール寮に戻ると、待っていたのは食べ物だけではなかった。リーは花火を爆発させていた。ディーン・トーマスはハリーの活躍を絵に描いた旗をいくつも作っていた。
「絵の上手なディーンが…」という記述は、「賢者の石」11章にも出てくる。せっかくの設定だから、ヴォルデモートとの戦いの中のどこかでこの特技を生かしてほしかった。たとえば、ディーンが似顔絵を描くことで何かが解決する、というような。

「リー・ジョーダンが、ハリーがテーブルに置いておいた卵を持ち上げ…」と書かれているのを見て、卵はそれまでどこにあったのかな?と思った。前章のラスト、ロンやハーマイオニーと歩きながら城へ戻ったとき、卵を持っていたかどうかは書かれていないが、たぶん持っていたのだろう。そのあと寮の談話室へ置きっぱなしにしてふくろう小屋へ行ったのだろうか?

その卵は上がふたになっていて、蝶番がついているようだ。
ふたを開けてみると、卵の中は空っぽで、泣き声に似た大きな音がして、みんなは耳をふさいだ。ハリーはあわててふたを閉めた。あとでわかるが、それは水中人のことばだった。しかし、魔法界育ちの生徒たちも、水中人の声は知らなかったようだ。
「誰かが拷問を受けてた!」と真っ青になったネビルが気の毒だった。

ハーマイオニーはさりげなく、厨房へのはいり方を双子に尋ねる。
「屋敷妖精を率いてストライキをやらかそうっていうのかい?」とジョージ。
「連中をそっとしておけ。服や給料をもらうべきだなんて、連中に言うんじゃないぞ!」とフレッド。
14章でハーマイオニーが始めた「屋敷妖精福祉振興協会」に双子は反対だったのだ。

そして12月。
ハグリッドの教材の尻尾爆発スクリュートは、殺し合いをしたせいで10匹になっていた。
「こいつらが冬眠するかどうかわからねえ」
ハグリッドは相変わらず無責任だ。ダンブルドア校長はなぜちゃんと指導監督しないのだろう。
大暴れするスクリュートをなんとかしばったところへ、リータ・スキーターがやってきた。たぶんハリーを目当てに来たのだろうが、ハグリッドにも興味を持ったらしい。
そして、ハグリッドはインタビューの約束をする。その結果がどうなるか、ハリーたち3人は心配でならない。ハリーのインタビューをでっちあげたリータなのだから。その結果がわかるのは24章になる。