ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第24章後半)

クリスマス明け以来ハグリッドに会えないまま、1月なかば、ホグズミードに行ける日がきた。
ハリーも行くつもりでいたが、ハーマイオニーは「せっかく談話室が静かになる。あの卵に真剣に取り組むチャンスよ」と言う。
卵のことを真剣に考えているハーマイオニーと、考えたくないことはできるだけ後回しにしたいハリーとの違いがよくわかるやりとりのひとつだ。

ここでハリーが「もう相当いいところまでわかっているんだ」と嘘をつくことが、わたしにはとても不快だ。
他の人に嘘をつくのならかまわない。このあとハリーはルード・バグマンにも同じ嘘をつくが、これは許せる。しかしハーマイオニーは、グリフィンドールの中で孤立したハリーをただひとり助けてくれて、第一の課題のためにあれだけ協力してくれたのだ。そのハーマイオニーにうそをつくなんて!

ところで、「アズカバンの囚人」では、三年生以上がホグズミード行きを許されていた。
ルールが変わっていないなら、一、二年生は談話室に残っているはずで、ハーマイオニーの忠告は変だ。
先の話になるが、「不死鳥の騎士団」16章のホッグズ・ヘッドの場面には、まだ2年生のはずのデニス・クリービーがいた。
「炎のゴブレット」の年からルールが変わって、低学年もホグズミードに行けるようになったのだと解釈しておこう。

ホグズミードに行くため校庭を歩いていると、クラムが水泳パンツ姿で湖に飛び込むのが見えた。
この時のクラムは、すでに卵の歌を聞いていて、サメ頭の呪文を練習していたのではないか?

「三本の箒」に着くと、ルード・バグマンがゴブリンたちに囲まれていた。あとでわかるが、借金を返せと迫られていたのだ。
ハリーを見つけた彼は、手助けを申し出る。当然ながらハリーは断る。
ここで彼は、バーサ・ジョーキンズがアルバニアで姿を消したことをハリーに話している。彼は実にいいかげんな男だが、この情報は本当だろう。この件でハリーにでまかせを言う理由はないのだから。

そこへリータ・スキーターが入ってきて、そうでなくてもハグリッドのことで怒っているハーマイオニーが燃え上がった。
ホグズミードから学校へ駆け戻り、ハグリッドの小屋まで一気に走って、小屋の戸を叩いた。

小屋にいたのは、意外にもダンブルドアだった。
ダンブルドアは、卒業生からきた手紙を見せて、ハグリッドを勇気づけていたらしい。
「世界中の人に好かれようと思うのなら、残念ながらこの小屋にずっと長いこと閉じこもっているほかあるまい」「わしが校長になってから、学校運営のことで、少なくとも週に一度はふくろう便が苦情を運んでくる」
このダンブルドアのことばは説得力がある。

ここで、ダンブルドアの弟アバーフォースの名前がさりげなく出てくる。「ヤギに不適切な呪文をかけた咎で起訴されての」というのだが、この「ヤギ」があとの巻への伏線になっている。

ダンブルドアの励ましとハリーたちの懇願で、ハグリッドは授業再開を決意する。
そして、「みんなに見せてやれ……純血じゃなくても出来るんだってな。自分の生まれを恥じることはねえんだ」と、ハリーに逆説教を始めた。
ハグリッドという男、どこまで単純なんだろう。
しかし、ハリーの勝利を信じきっている単純なハグリッドのおかげで、ハリーはやっと卵の秘密に真剣にとりくむ気になったのだ。