ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第28章前半)

土曜日のホグズミード行きの次の日、3人は厨房へ行った。鰓昆布のお礼として、ドビーに靴下をプレゼントするためだった。
ロンは「この間のエクレア、もうないかなあ」と催促。ロンの食いしん坊ぶりは、どの巻でも折に触れて描写されている。それが「死の秘宝」で彼が戦線離脱する伏線だったのだろう。

ウィンキーは仕事もせずに泣き暮らしていた。ウィンキーはただの召使いではなく、クラウチJr.の乳母のような存在だったと思われる。そして、彼がこのホグワーツにいることをウィンキーは知らない。屋敷で父親に監視されながら暮らしていると思い込んでいる。彼の世話をできるのは自分だけなのに、解雇された身では会いにいくこともできない。
「ご主人さまは、一人ではおできになりません」「ウィンキーは、ただクラウチさまの家事だけをやっているのではありません!」「ウィンキーは守ります。ご主人さまの秘密を」
これらのウィンキーのせりふの意味は、36章でやっとわかる。
厨房を出たあとのロンとハーマイオニーのけんかは、明らかにハーマイオニーの方が正しいと思う。

屋敷妖精たちにもらった食べ物は、ふくろうに頼んでシリウスに届けた。ここの描写はどうも不自然だ。ピッグウィジョンが大きなハムをまるまるは運べないので、ほかのメンフクロウ2羽に介助を頼んだとある。ひとつの荷物を3羽でいっしょに運ぶなんて、物理的にできることじゃないだろう。そり犬じゃあるまいし。なぜハムを3つに切り分けて、それぞれに持たせないんだ?

ハリーはそのあともしばらく、ふくろう小屋から校庭を見ていた。ハグリッドが小屋の前で地面を掘り起こしていた。翌日の授業の用意をしていたのだと、あとでわかる。

翌日の朝食の時間、ハーマイオニーには次々と嫌がらせの手紙が届く。中には毒液を同封したものもあって、手が腫れあがってしまう。
ハーマイオニーは医務室に行き、ハリーとロンは魔法生物飼育学の授業でハグリッドの小屋へ。

魔法生物飼育学は、いつもと同じように、スリザリンとの合同授業だった。
今日の教材はニフラーという動物だった。鼻の長い、黒いふわふわの生き物と書かれている。前足がスキのようにペタンと平たい。つまり地面を掘るのが上手な動物なのだ。ロンがこの動物をよく知らなかったところをみると、魔法界でもそれほど知られていないのだろう。だいたい鉱山に住んでいると、ハグリッドが言う。
読んでいて不思議なのは、生徒たちが自分のニフラーを適当に決めると、金貨を掘り出したニフラーがその生徒のところへ金貨をくわえてきて渡すことだ。犬や猫のように、見つけた物を飼い主に渡すのなら理解できるけれど。
ところでニフラーというのは、カッパのように既存の伝説にある動物だろうか。それともローリングさんが作り出した物だろうか。検索してもハリー・ポッター関連以外ヒットしないので、ローリングさんの創作らしい。

ゴイルが金貨をポケットに入れて持ち去ろうとして、ハグリッドに「盗んでもだめだぞ」「レプラコーンの金貨だ。数時間で消えるわ」と言われてしまう。
ゴイルとクラッブが意地汚い性格であることは、「秘密の部屋」の睡眠薬ケーキのくだりで描写済みだ。ゴイルはお金にも意地汚いらしい。
ここで不思議なのは、ハグリッドがいつこの金貨を入手したのかということだ。「数時間で消える」というのは、どの時点から数時間なのか? ハグリッドはいつ、レプラコーンから金貨を受け取ったのか? もし受け取ったのが昨夜なら、朝になるまでに金貨は消えていなければいけない。地面に埋めると、金貨の時間経過が一時的にストップするのか?

レプラコーンの金貨が消えると知ったことは、ロンにとって非常なショックだった。
ワールドカップのとき、レプラコーンが撒いた金貨をハリーに渡したはずが、それが消えたと知ったからだ。しかもハリーがそう言ってくれなかったと恨みごとを言う。あの時ハリーは、自分の杖が闇の印を出したというたいへんな事件に巻き込まれていたのだから、ロンの金貨どころではなかったのに。
それに、拾った金貨で清算したということ自体、わたしには不可解だ。
「貧乏って、いやだな」「フレッドやジョージが少しでもお金を稼ごうとしている気持ち、わかるよ。僕も稼げたらいいのに。僕、ニフラーがほしい」
このロンのせりふにもあきれる。フレッドとジョージは、自分たちの才能と努力をつぎこんで金儲けをしているのだ。ロンはニフラーを飼ってどうするつもりなんだ? ニフラーが拾って来る金貨や貴金属を自分の物にする気か?
貧乏は気の毒だが、この時のロンにはまったく同情できない。

ハーマイオニーは、リータ・スキーターが自分とクラムの個人的な会話をどうして知ったのか、どうしてもつきとめたいと思う。
でっちあげの記事のせいで嫌がらせの手紙を多く受け取ったくやしさもあるだろう。でも、勉強家で頭のいいハーマイオニーとしては、理解できない現象が起こっていること、その原因をつきとめられないことが嫌なのだと思う。謎は必ず解きたい、それがハーマイオニーの本能みたいなものだ。
透明マントを使っていないことは、ムーディに確かめてわかった。ほかに何か、盗聴できる魔法があるはずだ。ハーマイオニーはそう考えた。
「君に虫をつけたんじゃないかな?」とハリーが言う。この時ハリーが言ったのは盗聴器のことだった。俗に「虫」と呼ばれているからだ。
原文は bug だが、幸い日本語にも直訳できる俗語だったようだ。ハーマイオニーは、マグルの使う盗聴器を否定する。ホグワーツの敷地内では、電気製品は使えないと。
ただし、この単語がヒントになってハーマイオニーは真相をつきとめるが、それがわかるのは37章になってからだ。

そして物語は、いよいよ第三の課題へと進む。