ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第28章後半)

イースターが終わると夏学期が始まる」と書かれている。
ホグワーツの学年は9月1日に始まる。クリスマス休暇からイースター休暇までが春学期、イースター休暇から夏休みまでが夏学期なのだろう。

5月24日、選手はクィディッチ競技場に集められる。
競技場は、生け垣で囲まれていた。ルード・バグマンが「しっかり育っているだろう? あと1ヶ月もあれば、ハグリッドが6メートルほどの高さにしてくれるはずだ」と言う。
「さて、わたしたちがここに何を作っているのか、想像できるかね」というルードの質問に、「迷路」と答えたのはクラムだった。クラムの頭の回転はけっこう速いと思われる。
迷路の中には、ハグリッドがいろいろな生き物を置くという。これは不公平だと思う。ハリーとセドリックは、ハグリッドがどんな生き物を好きか知っているから、迷路にとんでもない動物を置くことが予想できる。でもクラムとフラーはそれを知らない。もっとも、それどころではない不公平な条件だったことがあとでわかるのだが。

ルードの説明が終わったあと、クラムはハリーを森の近くへと誘う。なぜこっちへ行くのかと聞くハリーに、クラムは「盗み聞きされたくない」と答える。ハーマイオニーと二人きりの時に言ったはずのことをリータが新聞に書いたので、神経質になっているのだ。
クラムはハリーとハーマイオニーの仲を疑っていたが、ハリーがきっぱり否定すると納得した。そして「君は飛ぶのがうまいな」とほめる。ハリーも、ワールドカップの時のクラムをほめる。二人の雰囲気がよくなりかけたその時、木の陰からクラウチ氏が現れる。

クラウチ氏は正気でなく、パーシーに話しかけているつもりで木にむかってしゃべる。
ここで「ウェーザビー」と呼びかけるのは気に入らない。クラウチ氏は有能な官吏という設定の方が、親子の悲劇が際立つし、パーシーの姓をいつまでも間違えて覚えているような人物として描かないでほしいものだ。
クラウチ氏は急に正気に戻り、「ダンブルドアに会わなければ」と言う。しかしすぐにまたおかしくなり「妻と息子がまもなくやってくるのでね」と話し始める。「息子は最近OWL試験で12科目もパスしてね。(中略)いや、まったく鼻が高い」という部分は切ない。この時クラウチ氏の意識は20年ぐらい前に戻っている。35章でクラウチJr.は「俺を決して愛してくれなかった父」と言ったが、少なくとも出来のいい息子を父が自慢に思っていた時期はあったのだ。

ハリーはクラムとクラウチ氏を残して校長室へ急ぐ。
守護霊の呪文を使えるハリーだが、守護霊による伝言のやり方はまだ知らない。作品の最後まで、伝言を習う場面はない。ハーマイオニーが練習しているというせりふは「死の秘宝」9章にあるけれど。
だからハリーは校長室へ走るしかなかった。
ハリーがダンブルドアに「ビクトール・クラムをいっしょに残してきました」と言うと、「残した?」とダンブルドアの声が鋭くなり、一層大股になった。ダンブルドアはクラムが危険な目にあう可能性を予測できたのだ。

元の場所に戻ると、クラムが失神術を受けて倒れていた。
ダンブルドアはハグリッドの小屋に向けて守護霊を出す。「何か銀色の物が飛び出し、半透明な鳥のゴーストのように…」と書かれている。わたしの記憶の限り、ダンブルドアの守護霊の描写はここだけだ。守護霊が不死鳥だというのは、原作者の公式サイトの情報なのだろうか。

意識を取り戻したクラムは「あの狂った男が僕を襲った」と叫ぶ。おそらく、服従の呪文にかかっての行動だろう。
かけつけたハグリッドにダンブルドアは、カルカロフ校長を呼んでくるように言う。
そこへムーディがやってくる。あとで考えれば、ムーディはずっとそこにいたわけだが、たった今来たように装い、クラウチ氏を探すふりをする。

カルカロフが駆けつけ、クラムが襲われたと聞いて激昂する。
この時のカルカロフの怒りは、無理ないと思う。ホグワーツから選手がふたり選ばれたこと、クラウチ氏がクラムを襲ったことで、ダンブルドアやイギリス魔法省の陰謀だと思ってしまうのも当然だろう。だから、ダンブルドアを非難されて怒りだし、暴力をふるうハグリッドは大人げない。ま、ハグリッドの性格ならしかたがないけれど…
ダンブルドアの指示で、ハグリッドは城までハリーを送っていく。