ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第31章後半)

夕食後、第三の試合が始まった。
第二の試合は湖の中、第三の試合は陸上だが夜。どうして試合を見る人が見づらい場所、見づらい時間帯にやるのだろうか? この理由はわからない。ストーリーの都合だろうか? でも第三の課題である迷路は、べつに昼間でもかまわないはずなのに。

クィディッチ競技場には、高さ六メートルの生け垣による迷路ができていた。
見物人がはいるスタンドはいつもと同じらしい。ただ、スタンドの高さが書かれていないので、見物人から迷路の内部が見えるかどうかはわからない。

試合は今までと同じようにルード・バグマンが仕切っている。
ハグリッド、ムーディ、マクゴナガル、フリットウィックがやってきた。この四人が迷路のまわりを巡回して、助けが必要なら救出に入るという。ムーディに化けたクラウチJr. にとっては、最後の勝負どころだと言える。

持ち点が多いセドリックとハリーが迷路に入る。時間をおいてクラム、そのあとでフラー。なるほど、こうやってハンディをつけることで、今までの点差を帳消しにして、優勝杯に向かうのか。
優勝杯は迷路の中心に置かれていて、最初にタッチする者が優勝し、賞金千ガリオンを受け取る。

ハリーは迷路の中を進むが、なかなか障害物に出会わない。
「迷路が、まやかしの安心感でハリーを誘い込んでいるようだった」と書かれているが、まさにそのとおりだったことがあとでわかる。ムーディが、ハリーの進路から障害物を取り除いていたのだ。ムーディに化けたクラウチJr. の、魔法使いとしての優秀さがここでもわかる。 

セドリックが尻尾爆発スクリュートに出会う。
この生物を使ったのは不公平だとわたしは思う。尻尾爆発スクリュートは、リータの記事(24章)によれば、マンティコアと火蟹を掛け合わせてハグリッドが作り出した新種だ。リータの記事のうち、ハグリッドが生徒達をおどかしているというのはウソだが、新種を作り出したのは本当だろう。ハリーとセドリックはこの生物を見たことがあり、名前さえ知っている。しかしクラムとフラーは知らない。とてもフェアな条件とは言えない。
ハリーはやがてディメンターに化けたまね妖怪をやっつけ、上下感覚を狂わせる霧に出会って何とかのがれ、そのあとしばらくは障害物なしで進むが、ついに尻尾爆発スクリュートに出会う。三メートルの大きさに育っていた。呪文はスクリュートの殻で跳ね返った。呪文というものは、物理的に止めたり跳ね返したりできるのだ。三度目にやっと、殻のない部分にあてた。

そこへ、クラムがセドリックに「はりつけの呪い」をかけている声が聞こえ、ハリーはかけつける。放っておいて漁夫の利をねらうこともできたはずだが、ハリーもそこまで自分勝手ではない。声の方へかけつけ、クラムを倒し、セドリックを助けた。
これもあとでわかるが、ムーディはフラーを失神させ、クラムに服従の呪文をかけてセドリックを襲わせたのだ。

セドリックとハリーは再び別れて迷路を進む。ハリーはスフィンクスに出会う。
「謎のプリンス」1章でファッジが「外国からドラゴンを三頭とスフィンクスを入国させる」と言っていたが、スフィンクスはイギリスにいないのだろう。やっぱりエジプト産か?
そしてギリシャ神話と同じように、なぞなぞを出す。ただ、イギリス産の生物じゃないのに英語のなぞなぞを出すのは変だ。やっぱりここはギリシャ神話と同じように、だじゃれでなく知恵で解けるクイズにしてほしかった。またこういう部分は、あとがきに原文を載せておくのが翻訳者としての誠実さじゃないのか? この訳者のあとがきは自分語りばかりで、読者に対する誠実さというものがない。

スフィンクスを無事通過したハリーは、セドリックが大蜘蛛に襲われそうなところにでくわす。ふたりは力を合わせて大蜘蛛を倒す。
これもハグリッドのアクロマンチュラだろうか? スクリュートといい大蜘蛛といい、法律違反の動物を親善試合に使っていいのか。
ハリーは大蜘蛛につるされ、高いところから落ちて足を怪我した。
優勝杯はすぐ近くにあった。セドリックがそばに立っている。しかし彼は優勝杯に触れない。ハリーに何度も助けてもらったのに抜け駆けはできないと思ったのだ。いかにもセドリックらしい。

ハリーの提案で、ふたりは同時に優勝杯に手をかける。
優勝杯はムーディの手でポートキーに変えられていた。ふたりはどこかへ運ばれていく。

もしこのとき、セドリックが先に優勝杯にタッチしたら、彼はどうなっていたのだろうか。
ハリーを待っていたのにセドリックが墓場へ来たら? やっぱり殺されていただろう。ただ、遺体がホグワーツに戻らないから、セドリックは永久に行方不明のままになったのだろうか。それともダンブルドアが探し当ててくれただろうか。