ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第36章前半)

バーティ・クラウチJr. の長い告白が終わった。
この巻の初めからのいきさつをすべて解き明かす、クライマックスだった。

ダンブルドアは杖先から縄を出し、クラウチJr. を縛って、マクゴナガルに見張りを頼んだ。
そしてスネイプには、本物のムーディを治療するため、マダム・ポンフリーを呼んでくるように頼んだ。さらに、ファッジも呼ぶように指示する。ファッジがクラウチJr. を尋問できるようにという好意からだったが、これが裏目に出て、ダンブルドアもハリーも次の巻で苦労することになる。

ダンブルドアはハリーを介助しながら、校長室へ向かった。
ここでちょっと不思議に思ったのは、、偽ムーディもダンブルドアも、ハリーの足の骨折を治そうとしなかったことだ。骨折の治療は専門技術で、マダム・ポンフリーでないと治せないのか? でもそれなら、せっかく彼女を呼んでいるのだから、彼女の到着を待ってハリーの足を治してもらえばよいのに。それに「死の秘宝」ではテッド・トンクスがハリーの骨折の治療をしている。彼が医者だという記述はなかったし…
少し読み進むと、不死鳥フォークスがハリーの足を治療してくれるのくだりがあるので、ダンブルドアが自分で治さなかったわけが一応はわかるのだが、もし治療できるのなら早い方がよかったはずだ。

校長室ではシリウスが待っていた。
ダンブルドアにうながされて、ハリーは墓場で起こったことを順を追って話し始めた。
ヴォルデモートが体を取り戻したこと、復活したヴォルデモートが死喰い人たちを招集したこと、ヴォルデモートとハリーが決闘したが、杖がつながって死者たちの影が出現したこと、セドリックの影の頼みで彼を連れて戻ったこと。
ハリーの血を使ったことで、ヴォルデモートがハリーに触れられるようになったことを話したとき、「ほんの一瞬、ハリーはダンブルドアの目に勝ち誇った光を見たような気がした」と書かれている。これが重要な伏線であることは、「死の秘宝」35章までわからない。

ハリーの杖とヴォルデモートの杖が兄弟杖であること、つまり同じ不死鳥の尾羽が使われていることは、ここでわかる。杖が金の糸でつながったのは、そのためだった。
ここでダンブルドアは「お互いに相手に対して正常に作動しない」「どちらか一本が、もう一本に対して、それまでかけた呪文を吐き出させる」と言っている。しかし、なぜハリーの杖の方が「吐き出させる」側になったのか、それはここで語られない。ハリーの方が死を覚悟し、勇気を持ってヴォルデモートに立ち向かった。つまり、精神力でハリーはヴォルデモートを凌駕していたのだが、それがはっきりするのはやはり「死の秘宝」35章だ。

話し終わると、ダンブルドアはハリーを医務室に連れていった。シリウスは犬の姿でついてきた。医務室ではモリー・ウィーズリーとビル、ロン、ハーマイオニーが待っていた。
マダム・ポンフリーに「夢を見ずにぐっすり眠れる薬」をもらい、ハリーは眠りについた。
ストーリーには無関係だが、医務室のベッドに羽根布団が使われていることがここで判明する。この場面は6月だが、スコットランドの6月はそれほど暑くなく、羽根布団が登場しても違和感はないのだろう。