ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第2章前半)

フィッグばあさんとのやりとりで、意外なことがいろいろわかる。
フィッグはスクイブだった。そして、ダンブルドアをよく知っていた。マンダンガスがハリーを護衛することになっていたが、マンダンガスが任務放棄しないよう警告し、万が一を考えて猫のティブルスを車の下に隠れさせた。マンダンガスが姿を消したとき、ティブルスがフィッグに知らせ、フィッグはダーズリー家にかけつけたが、ハリーは立ち去ったあとだった。
そのあと、ハリーのいるところをどうやって探し当てたのかは書かれていない。人間より鼻のきく猫が、ハリーのにおいをたどってくれたのかもしれない。あるいはやみくもに近所を探しているうちに、吸魂鬼に気づいてかけつけたのかもしれない。

ダドリーは血の気の失せた顔でふるえていた。フィッグばあさんはダドリーを立ち上がらせようとしたがダドリーは動かない。ハリーはダドリーを背負って歩き出した。

フィッグばあさんは「杖を出しときな。機密保持法なんて、もう気にしなくていいんだ」「未成年の制限事項と言えば……ダンブルドアが心配なすっていたのは、まさにこれだったんだ」などとひとりごとを言う。
フィッグが魔法界の状況に精通していることがよくわかる。そして、ハリーが魔法を使わざるを得ない状況に追い込まれることを、ダンブルドアがちゃんと予想していたこともわかる。そのために、ダンブルドアは交代でハリーに護衛をつけていた。
ハリーが魔法を使った以上、ダンブルドアは今すぐ行動を起こさなくてはいけない。そう判断できるフィッグは、魔法界の事情をよく知っているだけでなく、とっさの状況判断もできる人物だ。だからこそダンブルドアは彼女をハリーのそばに置き、ハリーを見守らせていたのだろう。

そこへマンダンガスが姿を現す。手に持っているのが透明マントだとハリーは推測する。マンダンガス自身の物か、任務のために誰かに借りたのかはわからないが、ハリー以外にもマントを持っている魔法使いはいるのだ。
フィッグはマンダンガスをなじり、ダンブルドアにすぐ知らせに行くようにと言う。

ダーズリー家に着くとフィッグは「家の中に入って、じっとしてるんだよ」と言う。自分は家へ戻って指令を待たなければいけない、と。ハリーが家の中にいれば安全だと、フィッグも知っていたのだろう。
フィッグがどれだけ魔法界とつながっているのか、ダンブルドアがどうかかわっているのか、ハリーはもっと聞きたかったが、フィッグは急いで走り去ってしまった。
ハリーは玄関のベルを鳴らした。ガラス戸に、ペチュニアおばさんが玄関に出てくるのが映った。

この章に出てくるフィッグのせりふ、「こぼれた魔法薬、盆に帰らず」「猫の尾を踏む」は、翻訳としておもしろい。(「帰らず」は、「返らず」が正しいので、ここでも翻訳者の日本語知識不足と、出版社の校正システムの欠如が表れているが)