ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第3章)

前章でペチュニアおばさんに「自分の部屋にいなさい。外に出てはいけない。寝なさい」と言われたハリーは、しかたなく自室に戻る。
そして三通の短い手紙を書く。ロン、ハーマイオニーシリウスあてだった。今この3人がどこにいるのか、ハリーは知らない。しかし魔法界のふくろうは、自分で宛先の人物を探して届けてくれる。マグル界で言えば電子メールに相当するだろうか。
そこへ、ヘドウィグが戻ってくる。死んだカエルを口にくわえていた。「それは置いとけよ。僕のしごとをしてもらうんだから」とハリーは不機嫌に言う。ハリーのこういうところ、わたしは大嫌いだ。これからおやつを食べようとしているのに、それを食べるひまも与えずに用事を言いつけるなんて。むしゃくしゃしているのは理解できるから、トランクを蹴飛ばしたことはいいのだが、ペットに八つ当たりするのはいただけない。だいたい、この物語の登場人物はふくろうに冷たい。よぼよぼのエロールに大荷物を運ばせたり…

吸魂鬼事件から四日目の夜になった。
ダーズリー一家は車ででかけ、ハリーはしだいに暗くなる部屋の中で無気力にぼんやりしていた。
第1章に誕生日カードのことが出てくるから、すでに八月に入っているはずだ。緯度の高いイギリスでは、暗くなるのが遅いのだろう。
突然、鍵がかかっているはずの家の中で、物音や話し声が聞こえた。
家に入ってきたのは、まず本物のムーディ、そしてルーピン。あとはハリーと初対面のトンクス、キングズリー、ドージ、ディーダラス・ディグル、エメリーン・バンス、スタージス・ポドモア、ヘスティア・ジョーンズだった。ここでもハリーがジェームズに生き写しであること、目だけがリリー似だということが語られる。

ダーズリーの家族がさきほど出かけたのは、トンクスがにせ手紙を出しておびき出したのだとわかる。
「全英郊外芝生コンテストで最終候補に残った」とマグルの手紙を出した。いまごろ、あるはずのない授賞式に向かっていると。
これはひどすぎると思う。ダーズリー夫妻は、そうでなくてもハリーのせいでいろいろ迷惑しているのに、その上こんな手段で恥をかかせるなんて。彼らを遠ざけておきたいなら、もっとほかに方法があるだろう。「死の秘宝」でハーマイオニーは両親に魔法をかけ、「オーストラリアへ移住したい」と思わせた。ダーズリー夫妻にだって、「博物館へ行きたい」とか「サーカスを見たい」とか、魔法で思わせればそれで済んだはずだ。
それはともかく、トンクスの父はマグル生まれだという。だからマグルの手紙もそれらしく書けたのだろう。「炎のゴブレット」のモリーと違って。

トンクスはハリーの部屋に入り、荷造りを手伝う。
このときの会話で、トンクスが「七変化」であること、「七変化」は生まれつきの能力で、学習で身につけるものではないとわかる。
ここでトンクスが使う呪文「パック」は、英語の単語そのままだ。他の呪文はラテン語を下敷きにしていて、魔法らしい雰囲気があるのに。ローリングさんの手抜きか?

ルーピンはダーズリー夫妻に置き手紙を残す。その中で、来年の夏にまた戻って来ると書いたという。
ハリーは「そうしなきゃいけない?」と聞いたが、ルーピンはただ微笑んだだけだった。
ダーズリー家に戻ることがハリーの安全を保障すると、ルーピンもおそらく知っているのだ。

ムーディがハリーに目くらまし術をかける。ハリー自身にさえ、ハリーが見えなくなる。
「賢者の石」でダンブルドアが「わしはマントがなくても透明になれる」と言っていたが、この術を使っていたのかもしれない。

一時間以上飛んで、やっと目的地に着いた。出発時も飛んでいる間も、指示を出していたのはムーディとルーピン。このふたりが作戦の責任者なのだろう。
ムーディはハリーに紙切れを見せる。「不死鳥の騎士団の本部は、ロンドン、グリモールド・プレイス12番地に存在する」と書かれている。
この紙をハリーに見せることで、「秘密の守人」がハリーに秘密を教えたことになるのだ。それが、次の章でわかる。