ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第4章前半)

ハリーに見せた羊皮紙のメモを、ムーディはすぐに燃やした。もし誰かに見られたら、「守人が秘密をもらした」ことになるのだろう。
ハリーは目の前の建物を見た。11番地のとなりが13番地になっている。ハリーがおどろいたところをみると、イギリスではほぼあり得ないことなのだろう。日本だったら、番地の順序がくいちがっているのは珍しくないけれど。

メモに書かれたことを思い浮かべたとたん、11番地と13番地の間に、古びた建物が現れた。
「アズカバンの囚人」語られた「忠誠の術」がどんなものか、ハリーも読者もここで具体的に知る。忠誠の術で隠されたものは、誰にも見えなくなり、秘密を知るもの以外の人間にとっては存在しないことになってしまうのだ。
3章でルーピンが「本部は見つからないところに設置した。しばらくかかったがね……」と言っていたのはここだった。

一行は石段をあがって建物の中に入った。ムーディはハリーにかけた目くらまし術を解いた。
モリー・ウィーズリーが出迎えた。モリーはハリーを案内して階段を上がり、部屋の扉だけを教えて、急いでいるようすで階下へ引き返した。

部屋に入ると、ハーマイオニーが飛びついてきた。
ロンもいた。そして、ヘドウィグもピッグウィジョンもそこにいた。
ハリーへの手紙に具体的なことが書かれていなかったのは、ダンブルドアがそう命令したからだった。ふくろうが途中でヴォルデモート側の人間につかまることは十分考えられる、というのが理由だろう。
ハーマイオニーとロンをつついてやれというハリーの命令を、ヘドウィグが忠実に実行していたこともわかった。
夏休みに入ってから、いつも誰かがハリーをこっそり護衛していたこと、マンダンガスが任務を放棄したことでダンブルドアが怒っていたこともわかった。

部屋には、絵のないカンバスがかけられていた。それがフィニアス・ナイジェラス・ブラックの肖像画だったということは、あとでわかる。この部屋でのハリーたちのふるまいは、フィニアスを通してダンブルドアに筒抜けだったのだろう。ハリーはロンとハーマイオニーを相手にかんしゃくを爆発させるが、これもダンブルドアに報告されたに違いない。

「不死鳥の騎士団」ということばは、この家に入る直前に見せられたメモで知ったが、それが何のことかがここでやっとわかる。
ダンブルドアが設立した秘密同盟で、以前ヴォルデモートが力を持っていた時期にヴォルデモートと戦った人たちの組織だという。
未成年は組織の会議に参加できないが、フレッドとジョージが発明した「伸び耳」という魔法道具で、ロンたちはある程度の盗み聞きができた。騎士団メンバーの活動の内容は、死喰い人を尾行して彼らの動きをさぐること、そしてハリーの護衛をすることだったらしい。新しいメンバーの勧誘も行っている。
ロンとハーマイオニーは、この家を掃除するために忙しくしているという。何年も人が住んでいなかったので、いろいろな魔法生物が巣食っているらしい。

そこへフレッドとジョージが現れた。姿現わしテストに合格したとかで、家の中でも瞬間移動している。
この家にはいろいろな保護がかけられていることがあとでわかるから、外からは姿現わしができないはずだが、家の中だけの移動は可能なのだろう。
ハリーたち三人組にジニー、フレッドとジョージが加わって情報交換。スネイプも時々報告に来ていること、ビルがエジプトから帰国して騎士団に加わっていること、フラー・デラクールグリンゴッツに就職して、ビルが英語の個人教授をしていること、パーシーが両親とけんかして出ていったこと。

このときハリーが聞いたいろいろな情報の中で、いちばん重要なのは、日韓予言者新聞でのハリーの扱いだった。ハリーが頭の変な目立ちたがりやという前提で、いろいろな記事の中にハリーの名前をすべりこませている。ハリーは新聞をとっていたが、第一面しか見ないので知らなかったのだ。
この新聞は、逆に、書くべきニュースを書かないこともよくある。
原作者ローリングさんの「マスコミ観」が反映しているのかもしれない。

ジニーの性格が変わっている気がする。いつからだろう? ハリーを見るたびに顔を赤らめたり、何かをひっくり返したりするジニーの面影は完全に消えている。
不愉快だったのは、モリーに「糞爆弾をこっそり置いたのは誰なの」と聞かれて、しれっと「クルックシャンクスよ」と答えたこと。自分がやったことを、他人のペットのせいにするなんてひどい。せめて「知らないわ」と答えてほしかった。
あとの巻でも、ジニーの性格の悪さは何度か描写される。