ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第7章)

尋問の日の朝がきた。
「ウィーズリーおばさんがベッドの足もとに、洗い立てのジーンズとTシャツを置いてくれていた」と書かれている。モリー・ウィーズリーは世話好きで、ハリーの母親代わりにこういう気づかいを見せる描写が時々出てくる。ハリーはときに迷惑に思うこともあるようだが。

台所におりると、ウィーズリー夫妻とルーピン、シリウス、トンクスがいた。
このときルーピンが「ハリーをチラッと見て、それからトンクスに話しかけた」とあるのは、「今は自分に話しかけてほしくない」というハリーの気持ちを察したからだろう。ルーピンは苦労人だけに、人の気持ちをよく察してくれる。
ここで、トンクスがスクリムジョールのことを「あの男、キングズリーやわたしに変な質問するんだ」と言っているのが、「死の秘宝」の彼のふるまいにつながっているのだろうか。
「カッとなるなよ」「礼儀正しくして、事実だけを言うんだ」というシリウスのせりふには、「あんたに言われたくないよ」と思った。

ハリーはアーサーといっしょに出発した。グリモールド・プレイス12番地から魔法省まで、地下鉄で四駅以上あることがここでわかる。歩いて行ける距離ではないようだ。いつもなら姿あらわしで出勤するアーサーだが。尋問の理由を考えれば魔法を使わずに移動するのがよいと言う。
地下鉄を降りて少し歩くと、古ぼけた電話ボックスがあった。それが魔法省の「外来者用入口」だった。
アーサーが番号ボタンを押した。女性の声のアナウンスが聞こえ、電話ボックスが地面に沈み始めた。
この場面は、33章で魔法省に行くとき、ハリーが行き方を知っていたことの伏線になっている。もしこの尋問がなければ、ハリーは魔法省がある場所を知らず、シリウスを助けに行きたくても行けなかったはずだ。つまり、ハリーが魔法省への行き方を知っていることを、ヴォルデモートが把握していたということにもなる。
ただ、このときの番号をずっとハリーが覚えていたことは不自然じゃないかと思う。

守衛室で杖を改めたあと、さっきとは違うエレベーターで、今度は上へ登っていく。七階、六階、五階と数字が小さくなっていくのは、ここが地下だからなのだろう。
ここで、本筋には無関係ながら、魔法省の各部の名称や、連絡に紙飛行機を使っていることが出てくる。
アーサーのオフィスは二階だった。

アーサーの同僚のパーキンスから、ハリーの尋問の時間と場所が変わったと知らされてアーサーはあわてた。ふだんは使わない十号法廷でやるというのだ。時間も早くなっている。
これがファッジ大臣の姑息な作戦であることは、次の章でわかる。もしかすると、アンブリッジの入れ知恵だったかも?
ここで出会うボード氏に、ハリーは23章で再会する。

「法廷……十号……たぶんここいらだ……あったぞ」
アーサーのこのせりふからすると、長年魔法省に勤めていながら、ここへ来たことはないようだ。
アーサーは法廷に入れないとわかり、ハリーはひとりでドアを開けた。