ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第8章後半)

ファッジは証人の存在を無視しようとしたが、ダンブルドアは「被告は証人を呼ぶ権利があるはずだ」と、アメリア・ボーンズを名指して同意を求める。ボーンズは「まったくそのとおり」と同意する。
7章でトンクスが「アメリア・ボーンズは公平な魔女だから、ちゃんと聞いてくれる」と言っていたが、そのとおりだった。トンクスは若いが、人を見る目があるようだ。

フィッグばあさんが入ってきた。
「賢者の石」で名前が出てきたときは「フィッグ」という姓だけ。「炎のゴブレット」のラスト近くで名前が出たときは「アラベラ・フィッグ」、そしてここで「アラベラ・ドーリーン・フィッグ」というフルネームがわかる。
ボーンズが「リトル・ウィンジングには、ハリー・ポッター以外に魔法使いや魔女がいるという記録はない。そうした状況は常に、厳密にモニターしてきた。過去の事件が事件だけに」と言うのは、興味深いせりふだ。魔法界におけるハリーの存在が特別だということ、ハリーの身のまわりについて魔法省がいつも注意を払っていることを示している。
しかしフィッグはスクイブなので、魔法省は彼女の存在を把握していない。ダンブルドアは魔法省に気づかれずに、魔法界の事情を知っている人物をハリーのそばに配置し、ハリーを見張らせることができたというわけだ。

ファッジとボーンズに質問に、フィッグはぎごちなく答える。
この時のハリーの気持ちは「フィッグばあさんは見たというが、せいぜい吸魂鬼の絵しか見たことがないように思えたのだ」と書かれている。
確かに、この場面のフィッグの発言は、あいまいすぎる。
でも、1章ラストから2章にかけてのフィッグは、事件がおこってすぐに「吸魂鬼」ということばを使っている。もし見えないのだったら、即座にこのことばが出てくるわけがない。

フィッグが出ていったあと、ファッジは「あまり信用できない証人だった」と言うが、ボーンズは「吸魂鬼が襲うときの特徴を実に正確に述べていたのも確かです。それに、吸魂鬼がそこにいなかったのなら、なぜいたなどという必要があるのか、その理由がない」と反論する。
ここで「マダム・ボーンズが低くひびく声で…」と書かれているのがおもしろい。
原作者は、ヴォルデモートの声を「甲高い声」、アンブリッジの声も「女の子のように甲高い声」と表現している。悪人側は甲高い声、正義の側は低い声に設定するのが好きらしい。
でも映画を見て改めて思ったが、アンブリッジはともかく、ヴォルデモートの声は低く設定した方がよかったのでは。

ディメンターがほんとうにリトル・ウィンジングにいたのか、それは魔法省が指示したことなのかについて、ファッジとダンブルドアの応酬が続く。ダンブルドアの頭の回転が速いことがここでもわかる。
ここでアンブリッジが口をはさむ。それまでファッジの陰でよく見えなかった彼女をハリーは初めてはっきりと見る。青白いガマガエルのような顔と書かれているが、どんな顔なのか想像ができなかった。
アンブリッジの皮肉な口調の異議にも、ダンブルドアは論理的に反論する。

しばらくの間、法廷にいる人たちはお互いに話し合っていた。
やがてボーンズが「被告人を無罪放免とするのに賛成の者」と言うと、おおぜいの手があがった。
「有罪に賛成の者」とボーンズが言うと、手をあげたのは5、6人だった。ファッジとアンブリッジのほかに「口ひげのりっぱな魔法使いと縮れっ毛の魔女」が手をあげたと書かれている。
このふたりが誰なのか、わたしには最後までわからなかった。
パーシーもおそらく有罪に手をあげたと思うが、彼については記述がない。

ファッジはやむなく、無罪放免を宣言する。
ダンブルドアは一度もハリーを見ることなく、法廷をあとにする。ダンブルドアがなぜハリーを見なかったのかがわかるのは、37章になってからだ。