ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第10章前半)

9月1日がきた。
ブラック邸からキングズ・クロス駅まで、ハリーたちは護衛つきで移動した。徒歩で20分。つまりブラック邸は、キングズ・クロス駅からかなり近い位置、つまり都心にあったのだ。魔法使いの屋敷が町のど真ん中にもあり、先祖代代住んでいることが、ここではっきりわかる。
出発のときに、護衛のひとりスタージス・ポドモアが来ないことでムーディがなかなか出発の許可を出さなかったことが語られる。スタージスがなぜ来なかったかがわかるのは14章、ハリーたちが日刊予言者新聞を読む場面だ。彼は8月31日の真夜中に魔法省へ忍び込んで捕らえられ、アズカバンへ送られた。26章ではハーマイオニーが、ルシウスが彼に服従の呪文をかけたのだろうと推測している。

シリウスは黒い犬に変身して、ハリーたちについてきた。
モリーは「ダンブルドアが駄目だっておっしゃったでしょう」「それなら、ご自分の責任でそうなさい」と、眉をひそめている。犬になったシリウスは、道中で猫にちょっかいを出したり、駅で前足をハリーの肩にかけたりと、目立つ行動ばかりしている。
閉じ込められていたシリウスにハリーは同情しているが、わたしは同情できない。犬の姿で外に出たいなら、夜中にこっそり外出すればいいだろう。見張られているはずのハリーについて歩き、わざわざ目立つことをするなんて。シリウスが犬に変身できることをヴォルデモートは知っているはずだし、黒い犬がハリーについて歩いていたら、死喰い人側にはそれがシリウスだとはっきりわかるはずだ。
映画では、駅で人間の姿になってハリーに写真を見せているが、何をか言わんやだ。写真を見せるのはブラック邸でできたはずなのに。

列車に乗り込んだとき、ロンとハーマイオニーは監督生の車両に行かなければならないとわかる。ハリーはジニーといっしょに空いているコンパートメントを探す。途中でネビルと合流し、ルーナがひとりですわっているコンパートメントに入る。
ここでジニーが「ルーニー・ラブグッドひとりだけよ」と言うのがわからない。面と向かってはルーナと呼び、本人に聞こえないところではルーニーと呼んでいるとすれば、かなり卑劣なふるまいだ。この作品の中でジニーはどんどん性格が悪くなっていくが、これもその表現のひとつなのか?

それはともかく、物語の重要人物のひとりであるルーナが、この巻になってやっと登場するというのはおどろきだ。
ハリーの第一印象は「変人のオーラが漂っている」だった。
ジニーがルーナを知っていたのは、同学年だったからだ。ルーナはレイブンクロー生だが、ジニーはときどき一緒に授業を受けていたのだろう。

ネビルが持ってきたサボテンのような植物が臭液を吹き出し、ハリーがそれをかぶってしまったという最悪のタイミングでチョウ・チャンが現れる、という間の悪いできごとのあと、ロンとハーマイオニーが戻ってきた。ロンは相変わらず食いしん坊ぶりを描写されている。
五年生は各寮に男女の監督生がひとりずついること、そして他の寮の監督生が誰かということを、ハーマイオニーとロンが話す。
ロンがさっそく監督生の権利をふりまわそうとするのを、ハーマイオニーがとがめる。やっぱりロンは監督生にふさわしくない。
ところで、監督生を決めるのは誰なんだろう? 校長か、それとも寮監か? 37章のダンブルドアのせりふでは校長が決めるようにも見えるが、ドラコとパンジーが選ばれたのは、スネイプのひいきの結果にも見える。

このときロンが「ヒヒの尻」と言って全員が笑う場面があるが、これは何か英語の慣用句なのだろうか?
何がおかしいのか、よくわからなかったが。

ルーナが持っていた「ザ・クィブラー」という雑誌だった。
ハーマイオニーはこの雑誌を「クズよ」と言ってしまい、ルーナの父が編集していると知ってあわてる。しかしハリーがざっと記事を見たところ、たしかにろくな記事がないようだ。

ドラコがやってくる。ロンと同じように、あからさまに監督生の権限をひけらかす。
それはいいが、ドラコがハリーに「君の足が規則の一線を踏み越えないように、犬のようにつけまわすからね」と言う。
シリウスが犬になって駅へ来たことをドラコが知っていると、ハリーとハーマイオニーはひやりとするが、ロンは何も気づかない。
駅でのシリウスが正体を知られたということは、シリウスがロンドンにいること、ウィーズリー夫妻やムーディがシリウスと行動をともにしていることがヴォルデモートに知られたということを意味する。

やがて、列車はホグズミード駅に着いた。
生徒たちを迎えにきたのは、いつものハグリッドではなかった。