ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第11章前半)

馬車の中で「ハグリッドが辞めるはずがないわよね?」と言うジニーに、ルーナが「辞めたらあたしはうれしいけど」「あんまりいい先生じゃないもん」と返す。
このとき、ハリー・ロン・ジニーが「いい先生だ!」と言い返し、ハーマイオニーだけが黙っているのがおもしろい。ハーマイオニーは公平な見方ができるから、ルーナの意見にも一理あると思ったのだ。ハリーににらまれて、「えーっと……そう……とってもいいわ」と、歯切れの悪い同意をする。
四対一で劣勢のルーナだが、それで機嫌をそこねたりせずマイペースなのがルーナのいいところだ。もしロンがこんな状況に立たされたら、機嫌を悪くしただろう。
このあともルーナは、いつも自分の意見をしっかり持ち、周囲に流されることのない人間として書かれている。原文で普通の英語をしゃべっているルーナのせりふを「…だもン」などと訳すのは、このようなルーナの印象をゆがめてしまうと思う。

学校に着き、馬車を降りて大広間に入った。
グリフィンドールのテーブルは、入り口からいちばん遠い。他の生徒たちが、そばを通るハリーを見てひそひそ話をする。日刊予言者新聞に書かれたハリーの悪口が、生徒たちにも浸透しているのだろう。
教職員の席に、ピンクずくめのずんぐりした魔女がすわっていた。ハリーには見覚えがあった。魔法省で尋問の場にいたアンブリッジだった。

一年生が入ってくる。組分け帽子が歌を始める。
これまでの帽子の歌は、それぞれの創立者の名前や寮の特性を述べるだけだった。しかし今回は、いつもより長く、まずホグワーツが創立されたころの創立者たちのようすを語り、創立者四人が次第に対立し、スリザリンが去った経過を歌う。そして最後に「ホグワーツ校は危機なるぞ」と警告する。
ゴーストのニコラスが、帽子が警告を発したことは過去にもあったと話す。
一年生の組分けが終わり、食事になった。

この場面で、ロンが無神経はせりふを吐き、ニコラスが気を悪くする場面がある。
「『ニック、ロンはあなたのことを笑い物にしたんじゃないわ!』ハーマイオニーがロンに恐ろしい一瞥を投げた」
と書かれている。この部分、せりふと地の文が矛盾している。原文のハーマイオニーのせりふには he wasn't really laughing at you と書かれているのだから、「ロンはあなたのことを本気で笑い者にしたんじゃないわ」とでも訳すべきだった。ロンのために言い訳しながら、ロンの無礼も同時にたしなめていたのだ。やっぱりハーマイオニーは公平だ。

食事が一段落すると、ダンブルドアが立ち上がって、注意事項などを話し、グラブリー・プランクが戻ったこと、そしてアンブリッジが新任教師として来たことを知らせた。
ここで「グラブリー・ブランク先生が戻った」という言い方をしたからには、ハグリッドが全学年の「魔法生物飼育学」を教えていて、グラブリー・プランクはハグリッドが留守のときだけ都合良く引っ張り出されるということなのか? ハリーたちが一年生と二年生だったとき、魔法生物飼育学はケルトバーンが担当していたと思われるのだが… 一年生のときすでに「幻の動物とその生息地」が指定教科書になっていたのだから、科目自体は一年生からあったはずだ。授業風景の直接の描写はなかったけれど。