ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第11章後半)

ダンブルドアの話が続いているのに、アンブリッジが咳払いをして立ち上がる。
ダンブルドアは一瞬おどろいたようすを見せたが、すぐに座った。他の教師たちは不機嫌な表情を見せたが、抗弁はしなかった。
アンブリッジは「ホグワーツに戻ってこられて、ほんとうにうれしいですわ」と話し始める。アンブリッジは過去にホグワーツで教えたことがあるのだろうか? それとも単に、ここの生徒だったというだけの意味なのか?

アンブリッジの演説を聞いているあいだのハリーの描写がおもしろい。「脳みその周波数が、合ったりはずれたりするようだった」と書かれている。
抽象的な説教なので、生徒たちには意味がよくわからなかったのだ。
アンブリッジは「保持すべきは保持し、正すべきは正し、禁ずべきやり方とわかったものは何であれ切り捨て、いざ、前進しようではありませんか」ということばで自分の演説を結ぶ。注意深く聞けば、今のダンブルドアのやり方はけしからん、方針を変えるべきだと主張していることがわかるのだが、生徒の中でそれを理解したのは、たぶんハーマイオニーだけだ。ハリーやロンにはそこまでの理解力はない。
ただ、教師たちにはわかったのだろう。「一回か二回手をたたいただけでやめてしまった先生が何人かいることにハリーは気づいた」と書かれているから。

ロンとハーマイオニーは監督生として一年生を引率するので、ハリーはひとりでグリフィンドール塔へ向かった。寮の入り口で、ネビルが合言葉を教えてくれた。ネビルは「僕、これだけは初めてそらで言えるよ」と言って、列車の中で持っていたサボテンのような鉢植えを見せた。合言葉がこの植物の名前だったのだ。
つまり、これまでの四年間、ネビルは合言葉を覚えられなかったことになる。

寮の寝室で、シェーマス・フィネガンが「ママに学校に戻るなって言われた」と話し始める。母親がハリーやダンブルドアを信じていないと言ったあと、「あの夜いったい何があったんだ?」と聞く。
ここでハリーが墓場でのできごとやクラウチJr.のことをきちんと話していたら、シェーマスも、そしてそばにいたディーン・トーマスも、理解してくれたに違いない。しかし気が短くかんしゃくもちのハリーは「どうして僕に聞くんだ?」「『日刊予言者新聞』を読めばいい。君の母親みたいに」と冷たく返す。

そこへロンが戻ってくる。ロンは自分がなぜハリーを信じているのかの説明をせず、監督生の権限をふりまわして「罰則を食らいたくなかったら口を慎め!」と怒鳴る。
ロンはハーマイオニーはもちろん、ハリーに比べても精神的に幼い。そこがかわいいと思っていたが、このあたりでわたしはロンが大嫌いになってしまった。
平安末期、平清盛の私兵だったかむろたちや、20世紀ドイツのヒトラー・ユーゲントの若者たちも、こういう性格だったんだろうか?

ネビルが思いがけず、助け舟を出してくれる。
「ばあちゃんは『日刊予言者新聞』こそおかしくなっているって」「僕たち、ハリーを信じてる」
そのあとに「ハリーはネビルに対する感謝の気持ちが一時にあふれてきた。もう誰も何も言わなかった」と書かれている。あれ? ハリーはネビルにお礼を言わなかったのか? 感謝の気持ちを持っただけで、それをことばに出さなかったのか? 

ハリーはベッドに入って、ダンブルドアに思いをはせる。
ハリーがうそつき呼ばわりされることは、ダンブルドアもそう思われているということだ。現にさっきシェーマスが言っていた。ダンブルドアはウィンゼガモットを解任され、国際魔法使い連盟から除名されたと。
国際魔法使い連盟から除名されたというのは、ダンブルドアが国際的にも信用を失ったということなのだろうか? それとも他国の魔法使いはあまり状況を知らず、イギリスの魔法省の働きかけだけでダンブルドアを除名したのだろうか?