ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第13章後半)

魔法生物飼育学の授業が終わり、次の授業のためハリーたちは温室へ向かった。
温室からジニーとルーナが出てきた。ルーナは、ヴォルデモートが戻ってきたというハリーを信じていると断言してくれた。
ここでハーマイオニーが「ジニーがあの子のことをいろいろ教えてくれたけど…」と言っているのはおもしろい。ハーマイオニーとジニーは、学年が違うけれど同じグリフィンドール生として、ハリーの知らないところで(つまり、読者の知らないところで)いろいろ話し合っているのだ。

夢想家のルーナに励まされて複雑な気持ちになるハリーだったが、アーニー・マクミランが近づいてきて「僕も君を百パーセント信じる」と言ってくれた。ハリーにはありがたいことばだった。
薬草学の授業では、スプラウト先生が他の先生同様、今年のOWL試験について話した。
ここで「スプラウト先生お気に入りの肥料、ドラゴンの糞」とあるのがおもしろい。魔法界でドラゴンの糞は、マグル界の鶏糞に相当するのだろう。ただ、鶏糞と違ってドラゴンの糞はどこにでもあるわけではない。鶏糞よりずっと値が張るだろうな。

アンジェリーナ・ジョンソンが、ものすごい剣幕でハリーを叱る。クィディッチのキーパー選抜をする時間にハリーがアンブリッジの罰則を受けたことを怒っているのだ。
アンジェリーナが去ったあと、ハリーが「オリバー・ウッドが事故で死んでいないかどうか調べた方がいいな。アンジェリーナに魂が乗り移ったみたいだ」と言う。
死者の魂が乗り移るという考えは、全世界共通なのだろうか。

夕食後、ハリーは罰則を受けるためにアンブリッジの部屋に行った。
この部屋は過去にロックハートが、ルーピンが、そして偽ムーディが使っていた部屋だった。だぶんクィレルもここを使ったのだろう。
アンブリッジの趣味で、かわいい柄のカーテンやレースの布でかざられ、子猫の絵柄のコレクションが壁にかかっている。「あまりの悪趣味に、ハリーは見つめたまま立ちすくんだ」と書かれているが、記述を読む限り、悪趣味という印象はうけない。

章タイトルの「アンブリッジのあくどい罰則」の「あくどい」は、原題にはない。原題は Detention with Dolores で、この頭韻を日本語にうつすために加えたものだ。この日本語の章タイトルは確かに合っている。アンブリッジの罰則は確かにあくどいものだった。ハリーに「僕はうそをついてはいけない」と紙に書き取らせると、ハリーの手の甲にその文字が刻まれ、痛みが走るのだ。ハリーの血がインクになっている。作品全体の印象では、アンブリッジの魔法力はそれほど優秀じゃないと思えるが、この罰則は魔法として非常に巧みだ。

アンブリッジの前では弱みを見せないようにしたハリーだったが、寮に戻ると宿題をする気になれなかった。翌朝、ロンやハーマイオニーにも、ハリーは「ただの書き取りだった」と報告している。この気持ちはわかる。
前日にもこの日にも、ロンは挙動不審なところを見せる。

罰則は毎日続いた。
三日目の罰則のあと、廊下を歩いていたハリーは、ほうきを持ったロンに合う。
ロンはクィディッチチームに入りたくて、ひとりで練習をしていたのだ。
ハリーはロンに問いつめられて、アンブリッジの罰がどんなものかをうちあける。ロンは大憤慨して、マクゴナガルかダンブルドアに訴えることを勧める。ハリーはそのどちらもしたくない。この心理は理解できるが、リアル世界でいじめ被害者がそのいじめをまわりに訴えないのと似ているな、とも思う。
でも、ロンが憤慨してくれたことは、ハリーにはうれしかっただろう。

罰則の最後の日、アンブリッジが手の傷を見るためにハリーの手をとったとたん、ハリーの額の傷痕に激痛が走る。
この痛みが何なのか、よくわからない。意味がないはずはないのだが…
この巻のどこかに、痛みの原因を示すできごとが書かれているのだろうか。思い出せない。

談話室へ戻ると、ロンがキーパーに選ばれたと大喜びしていた。
アンジェリーナによると、あとのふたりの候補の方が飛びっぷりがよかった。したしひとりは不平ばかり言うし、もうひとりはクラブ荒らしで、ほかのクラブを優先すると公言しているのでロンを選んだということだった。