ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第14章前半)

五年生の最初の一週間が過ぎ、土曜日になった。
そういえば、新学年の始まりは9月1日と決まっている。「不死鳥の騎士団」は1995年から1996年のできごとなので、リアル世界の9月1日は金曜日だ。しかしこの物語の中では、学期はじめのパーティの翌日が月曜日になっている。原作者はリアル世界の曜日を気にせず、単に物語の都合で9月1日の曜日をその都度決めているようだ。
読者としても、「不死鳥の騎士団」の巻が1995年だと知るのは「死の秘宝」の墓銘碑を見たあとなのだから、リアル世界の曜日のずれは気にならずに読み進むことになる。

土曜の朝、ハリーは誰よりも早く談話室に降りた。
「丸めた羊皮紙の切れ端や、古いゴブストーン、薬の材料用の空の広口瓶、菓子の包み紙など、一日の終わりに散らかっていたゴミくずの山は、きれいになくたっていた」と書かれている。
今のハリーたちは、この部屋を毎晩きれいにしてくれるのは屋敷妖精だと知っているが、それを知るまではどう考えていたのだろう? 部屋そのものに魔法がかかっていて、ひとりでにきれいになると思っていたのかもしれない。
それにしても、くずかごに入れておくぐらいのことはできないんだろうか?

ハリーは談話室で、シリウスに手紙を書いた。手紙が第三者の手に渡ってもなんのことかわからないように、文言に気をつけながら。
ふくろう小屋へ行き、ヘドウィグに手紙を託して送り出したとき、チョウ・チャンがやってきた。母親の誕生日のプレゼントを送るのだという。
チョウは、ハリーがアンブリッジに立ち向かったことを知っていて、「あなたはとても勇敢だったわ」と言ってくれ、ハリーはそれだけで有頂天になった。

そこへフィルチがやってくる。ハリーが糞爆弾を注文していると垂れ込みがあったというのだ。手紙をもう出してしまったというハリーを信じないフィルチだったが、「ハリーが出すところを、私見たわ」というチョウの援護射撃で、フィルチはひっこんだ。
ハリーが手紙を出そうとしていると、フィルチは誰から聞いたのか。ハーマイオニーは18章で、アンブリッジだと推測している。ハリーから手紙をとりあげ、それを読む口実に「糞爆弾を注文」という設定をして、フィルチを差し向けたのだと。

ハーマイオニーに、日刊予言者新聞が配達されてきた。そこには「殺人鬼シリウスは現在ロンドンに隠れている」という記事があった。
「スタージス・ポドモアが8月31日に魔法省に侵入し、アズカバンに六ヶ月の収監を言い渡された」という記事もあった。スタージスは、ハリーがブラック邸を出るとき、護衛のひとりに予定されていたが来なかった人物だ。騎士団の任務と離れたところでスタージスは動いていたことになる。ロンが珍しく(?)スタージスは嵌められたとつっこんだ推理をし、ハーマイオニーがそれに同意する。

食事が済んでクィディッチの練習になった。
更衣室からボールを取り出して、ロンとふたりで練習していたとき、ロンはなかなかうまいとハリーは思った。ところが競技場に向かって歩いていると、ロンはだんだん口数が少なくなる。
競技場に入ると、スリザリンの生徒たちが見物に来ていて、いつものようにドラコがロンをからかう。
ここでパンジー・パーキンソンが、アンジェリーナの髪型を馬鹿にする。「頭から虫が這い出ているような髪をするなんて、そんな人の気がしれないわ」と。
この物語には、出自や貧富の差による差別はえげつないほど書かれているが、人種差別はないと思っていた。しかしここでは珍しく、黒人の自然な髪型が差別の対象になっている。

さすがにアンジェリーナはこのからかいを気にせず、練習を始めた。しかしロンはそうはいかなかった。動揺したロンはミスばかりした。フレッドが事態をさらに悪くした。ケイティの鼻血を止めようとしてフレッドが渡した薬で、鼻血がますますひどくなったのだ。

予定より早く練習をきりあげ、談話室へ戻ったハリーとロンは宿題にとりかかるが、クィディッチ練習がうまくいかなかったことが頭を離れず、なかなか進まない。