ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第16章前半)

「アンブリッジがまともな授業をしないので、ハリーが他の生徒に実技を教える」とハーマイオニーが提案して二週間が過ぎた。
その間、ハーマイオニーはこの話題に触れなかったとさりげなく書かれている。ハーマイオニーはハリーの中で考えが熟すのをじっと待っていたのだ。
これまでもハーマイオニーは、言いたいことがあってもすぐに口に出さず、時期を選んで発言するという慎重さを見せている。たとえば虫に化けたリータ・スキーターを捕らえた時などだ。ハーマイオニーが考え深い性格だということがよくわかる。
そしてハーマイオニーの読みどおり、ハリーは無意識に「授業」の計画をたてていた。

自分は特に優れているわけではない、幸運だった部分が多かったというハリーに対して、ハーマイオニーは、ハリーが他の生徒より優れている点をあげる。偽ムーディの授業で、ハリーだけが服従の呪文に抵抗できた。守護霊を作り出せるのもハリーだけだと。
ここでハーマイオニーの「ビクトールがいつも言ってたけど…」という言い方で、ハーマイオニーとビクトール・クラムがかなり深く付き合っていたことがわかる。彼がダームストラングに戻ったあと、ハーマイオニーとの文通が続いていたことも、ここでわかる。
ロンがあからさまに嫉妬するが、ハーマイオニーはそれに気づいただろうか?

結局、ハーマイオニーの提案どおり、10月の最初の週末にホグズミード行きの日があるので、そこでハリーから防衛術を習いたい生徒が集まることになった。学校の中だと、アンブリッジの目があるからだ。

ハーマイオニーは集合場所として「ホッグズ・ヘッド」を選んだが、この店に足を踏み入れたことはないようだった。路地の奥にあって、うさんくさい雰囲気の店なので、他の生徒がくることはないと考えたのだ。生徒がここに入っていいかどうか、ホグズミードで集まることが校則にひっかからないかどうかは、きちんと下調べしていた。

いよいよその日が来た。
三人は薄汚い「ホッグズ・ヘッド」に入った。ヤギのようなきつい臭いがしたと書かれている。勘のいい読者なら、「炎のゴブレット」24章のダンブルドアが言った「わしの兄弟のアバーフォースは、ヤギに不適切な呪文をかけて起訴されての」というせりふを思い出したかもしれない。
バーテンが登場した場面には「ハリーはなんとなく見覚えがあるような気がした」と書かれている。9章でムーディが第一次騎士団の写真を見せたとき、その写真の中に20年前のアバーフォースがいた。その写真が意識の底に残っていたのだが、この時点でのハリーは自覚していない。

このバーテンがアバーフォースだと知った上で読み返すと、ここで行われた集まりのことは彼から即座にダンブルドアに伝わったはずだと想像できる。
それに、この店にいるあやしい人物のひとりは、体中を布で包んで魔女に化けたマンダンガスだったということが、17章のシリウスのせりふでわかる。
どちらのルートからも、ハリーたちがやっていることはダンブルドアに筒抜けだった。

ハーマイオニーの予想を超えて多くの生徒たちがホッグズ・ヘッドにやってきた。
ネビル、ディーン・トーマス、ラベンダー・ブラウン、パチル姉妹、チョウ・チャンとその友人、ルーナ・ラブグッド、ケイティ・ベル、アリシア・スピネット、アンジェリーナ・ジョンソン、コリン・クリービーとデニス・クリービー、アーニー・マクミランジャスティン・フィンチ=フレッチリー、ハンナ・アボット、アンソニー・ゴールドスタイン、マイケル・コーナー、テリー・ブート、ジニー、フレッド、ジョージ、リー・ジョーダン。ほかにハリーが名前を知らない生徒がふたり。
ハーマイオニーは「ほんの数人よ」と言っていたが、全部で25人になったのだ。
グリフィンドールの生徒が多いけれど、ハッフルパフもレイブンクローもいる。さすがにスリザリンの生徒はいなかった。ハーマイオニーが、スリザリン生だけは声をかけなかったのだろう。