ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第20章前半)

ハグリッドが戻ってきたと聞き、ハリーは大急ぎで談話室から寝室へ行って、透明マントと忍びの地図をとってきた。ハーマイオニーも、コートやマフラー、手袋。毛糸の帽子を身につけてきた。スコットランドの11月は寒いのだ。(本編には「スコットランド」という地名はどこにも出てこないが、「幻の動物とその生息地」の書き込みから、ホグワーツスコットランドにあると断定できる。)

三人は透明マントに隠れてハグリッドの小屋へ向かった。
ハグリッドは大喜びで三人を迎えた。「帰ってからまだ三秒とたってねえのに…」と言っているところを見ると、ハーマイオニーが目撃したのは小屋に向かっているハグリッドだったのだろう。

ハグリッドは顔も手も傷だらけで、歩き方も変だった。
あとでわかるが、弟のグロウプによる怪我だった。
ハーマイオニーが「巨人に襲われたの?」と聞くとハグリッドは動揺したが、「当たらずといえども遠からず」だったのだ。
実際、ハグリッドは巨人を訪ねていたのだ。
巨人を見つけるのはむずかしくない、とハグリッドは言う。マグルに出会うこともある。しかし、もしマグルが巨人に殺されたら、山での遭難ということになるのだそうだ。

「何をしていたのか話してくれよ」「巨人に襲われた話を聞かせてよ。そしたらハリーが、吸魂鬼に襲われた話をしてくれるよ」
ロンの持ちかけ方は巧みだ。ふだんなら、こういうせりふはハーマイオニーの役目かもしれないが、時にはロンも名言を口にする。
そこで、ハグリッドの物語が始まる。

ハグリッドとマダム・マクシームは--ハグリッドは「オリンペ」と、ファーストネームで彼女を呼ぶようになっていたが--巨人を訪ねて旅をした。巨人が住んでいる場所はダンブルドアが教えてくれた。人目をひかないように、まずフランスへ行ってふたりで休暇を過ごすように見せかけ、その後魔法を使わずに移動したので、一ヶ月かかったという。ロンは驚愕していた。魔法使いにとって、世界のどこであれ「移動に一ヶ月」というのは信じられない遅さなのだろう。
それにしても、巨人が住んでいるのはヨーロッパのどの地域なのだろう。ハグリッドは「ポーランドの国境で、トロール2匹に出くわした」「ミンスクのパブで吸血鬼と言い争いをした」と言っている。ポーランドベラルーシを通ってたどりつく山地というなら、ウラル山脈あたりか?

かって巨人は、世界各国に多数いた。しかし魔法使いとの争いの中で一カ所にかたまって暮らすようになった。しかし、かたまって暮らすのには向かない彼らの習性のせいで殺し合い、現在は80人ぐらいになってしまった。
ハグリッドとマクシームは、ダンブルドアからの贈り物を高々とかかげて、巨人の頭であるカーカスの方に歩いていった。その贈り物が「グブレイシアンの木の枝」と聞いてハーマイオニーは興奮したが、ハリーとロンには何のことかわからなかった。フリットウィックが授業で言ったのだが、ふたりは覚えていなかったのだ。

2日目も、ハグリッドとマクシームはカーカスに贈り物を持っていった。カーカスは英語を話せないが、他の巨人の通訳で意思疎通ができた。イギリスで最後の巨人を殺すことにダンブルドアが反対したことをカーカスは聞いていた、と書かれているが、その巨人とはハグリッドの母親のことだったのか?

3日目も次の贈り物を持っていくつもりだったが、2日目の夜に巨人たちの間に争いがおこり、カーカスは殺されてしまった。
新しい頭のゴルゴマスに、ふたりは贈り物を持って行った。しかし巨人たちは敵意をむき出しにし、ハグリッドを逆さ吊りにした。マクシームが結膜炎の呪いを使って反撃、ふたりは逃れることができた。

一方、死喰い人たちもゴルゴマスに近づいていることが判明した。
ハグリッドがマクネアを見かけたのだ。ゴルゴマスは、マクネアたち死喰い人には敵対的なふるまいをしていない。
ハグリッドとマクシームは作戦を練り、ゴルゴマスに与していない巨人たちに近づくことにした。6-7人の巨人たちがわかってくれた、という段階まできたが、彼らがゴルゴマス一味に襲撃され、それ以後はハグリッドに耳を傾ける巨人はいなくなった。

「俺たちはやるべきことをやった」とハグリッドが言う。結果は思わしくなかったが、自分たちにできることはすべてやり尽くした、という一種の満足感はあったようだ。
それにしても、ハグリッドが語るマクシームの行動は興味深い。教育者としてだけではなく、戦士としても優秀な女性なのだ。彼女はダンブルドアを深く信頼している。過去のダンブルドアとマクシームの間に何があったのか、第一次騎士団の時期にいっしょに戦ったことがあったのか、興味はつきない。

マクシームがとっくに戻っているのに、ハグリッドだけが遅くなったのはなぜか、ハグリッドの怪我は誰に襲われたのか。それをロンが問いただすとしたとき、小屋のドアを誰かが叩いた。
アンブリッジだった。