ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第20章後半)

戸をドンドン叩く音が聞こえ、窓にずんぐりした人影が映った。
アンブリッジだと気づいたハリーたちは、透明マントをかぶり、マグを隠すようにとハグリッドに言う。ハグリッドは事態がよく理解できないまま、ハリーとロンがお茶を飲んでいたマグを隠した。ただ、ハーマイオニーはマグを取り落としたので、割れたカップは床に落ちたままだった。

ハグリッドが戸をあけると、アンブリッジはずかずかと入ってきた。
「あなたがハグリッドなの?」「わたくしはドローレス・アンブリッジです」
ハグリッドとアンブリッジは、これが初対面だったのだ。ハグリッドは、名前だけは知っていたようで、「たしか魔法省の人だと思ったが…」と言う。アンブリッジは「いまは『闇の魔術に対する防衛術』の教師ですが」「それに、ホグワーツ高等尋問官です」という。
当然ながらハグリッドには、ホグワーツ高等尋問官が何のことだかわからない。戻ってきたばかりで、学校のようすは何も知らないのだ。

「城の玄関からあなたの小屋まで、雪の上に足跡が三人分ありました」
この指摘に、ハグリッドは返事ができなかった。
アンブリッジは小屋の中を歩いて、ベッドの下をのぞきこんだり、戸棚を開けたりしたが、結局ハリーたちを見つけられなかった。
次にアンブリッジは、ハグリッドの顔の傷について問いただす。これにもハグリッドは、見え透いた下手な言い訳をする。
アンブリッジは、査察の予告だけして帰っていった。
ここでハリーたちが見つからなかったのは奇跡と言えるだろう。アンブリッジなら透明マントの存在は知っているはずなのだから。それに、三人の足跡があったということから、それがハリーを含む生徒たちであることはたやすく推測できたはずだから。
奇跡というより、原作者のご都合主義か?

ところでアンブリッジは、ハグリッドが戻ってきたことをなぜ知ったのだろうか。
ハーマイオニーはたまたま窓の外を見ていて、小屋に戻ってくるハグリッドを目撃したのだった。
アンブリッジはアンブリッジなりに、校内のようする知るための情報網を持っていたのだろうか。
あるいは、ハグリッドが戻ったことを直接知ったのではなく、ハリーたち三人組のあやしい動きを察知して足跡を追ったら、ハグリッドの小屋に着いたということなのだろうか。

アンブリッジが去り、ハリーたちは透明マントをぬいだ。話題が査察のことになった。
ハーマイオニーが「授業ではどんなものを教えるつもり?」とおそるおそる聞いたが、ハグリッドは「教えねえ。びっくりさせてやりてえからな」とはぐらかす。
「何年もかけて育ててきたんだ。俺のは、イギリスでただ一つっちゅう飼育種でな」とヒントだけ言うが、これはセストラルのことだったのだろう。
ハグリッドが魔法動物に関して一流の腕を持っていることだけは確かだ。しかし、アンブリッジの査察に関するハーマイオニーの必死の忠告を理解できないのは、やはり頭が悪いからだと思う。

三人はふたたび透明マントをかぶって城に戻った。今度はハーマイオニーの消却呪文で足跡を消しながら進んだ。こういう時も、呪文を使うのはやはりハーマイオニーなのだ。