ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第21章後半)

十二月になって、クリスマス休暇が近づいてきた。
ここで、ロンの尊大な監督生ぶりと、ハーマイオニーの「勘違い屋敷妖精支援」が描写される。こういうところ、原作者は容赦ない。主要な登場人物の長所も書くが、欠点もちゃんと書いていく。ストーリーに直接関係のない描写の中でさえも。

休暇前の最後のDA練習日になった。
集まったとき、アンジェリーナとケイティが、クィディッチを禁止されたハリーと双子の代わりを見つけたと話す。ハリーに代わるシーカーはジニーだと。それはいいのだが、なぜ寮で言わないのだろう?選手の交代は秘密でもなんでもないから、他寮の生徒に聞かれてもかまわないけれど、それでもまず身内だけがいる寮で話すべきことじゃないのか。この不自然さは何かの伏線なのかと思ったが、結局は考え過ぎだった。

失神の呪文と妨害の呪いを一時間ほど練習して、解散の時間になった。
チョウ・チャンとハリーが残った。チョウは泣いていた。セドリックを思い出していたのだ。短いやりとりのあと、チョウは「あなたが好きよ」と言ってくれた。原文は I really like you, Harry となっている。

その後何があったかの直接の描写はない。「三十分後、ハリーが談話室に戻ると…」と書かれているので、ハリーとチョウが二人きりで三十分近い時間を過ごしたことがわかる。そして、ハーマイオニーのズバリの質問「キスしたの?」にハリーがうなずいたことで、読者にも具体的なてんまつがわかる。
ヤドリギの下のキス」は、イギリスでよく知られた言い伝えなのだろう。

この時のハーマイオニーとロンのやりとりは、ロンの幼稚さとハーマイオニーの考え深さがよく表れている。
恋人のセドリックを失った悲しみ、ハリーに惹かれていく自分自身へのとまどい、罪悪感、そして心の動揺がクィディッチの試合に悪影響を与えている悩み。別の寮のことなのに、ハーマイオニーはチョウを気にかけ、適切な判断をしている。チョウの気持ちをハリーに説明するハーマイオニーは、まるでハリーの姉のようだ。

話しながら、ハーマイオニーは長い手紙を書いていた。誰に書いているのかとロンに聞かれて「ビクトール」と答えるハーマイオニー。前巻「炎のゴブレット」で知り合ったクラムとハーマイオニーは、ずっと文通をしていたのだ。

寝室に戻って眠り、ハリーは不思議な夢を見る。
ハリーは蛇になって、廊下を進んでいる。突き当たりの扉の前にアーサー・ウィーズリーがいて、ハリーは彼を襲い、歯をあばら骨に突き刺す。
激しい頭痛に襲われたハリーの様子を変に思った同室のロンたちが、ハリーを揺り起こした。
ハリーはその夢が、実際に起こっていることだとどうして知ったのだろう。普通の夢と、ヴォルデモートの心と同期している時の夢とでは、まったく感覚が違うのだろうか。ハリーお得意の直感だろうか。

ロン、ネビル、シェーマス、ディーンは、ハリーが病気だと思った。ネビルがマクゴナガル先生を呼びに行った。
しばらくして、マクゴナガル先生がやってきた。彼女は夜着のガウンまでタータンチェックだ。
マクゴナガルが夜どこで眠っているのかはわからないが、寮監である彼女は、何かあったらすぐかけつけられるように、寮のすぐ近くに寝室を持っているのだろう。
マクゴナガルはハリーの話を聞いて「信じますよ。ポッター」「ガウンを着なさい。校長先生にお目にかかります」と言った。
ハリーがこういう夢を見る可能性を、マクゴナガルはダンブルドアから聞いていたのかもしれない。