ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第22章前半)

ハリーとロンは、マクゴナガル先生に連れられて校長室へ向かった。
校長室へ入る合言葉は「フィフィ フィズビー」になっていた。「秘密の部屋」11章では「レモン・キャンディー」だった。校長室の合言葉はお菓子の名前になっていて、時々変えるのだろう。

部屋の中から、十数人が話し合っているような声が聞こえた。マクゴナガルがノックをすると話し声がやみ、扉がひとりでに開いた。ダンブルドアは遠隔操作で扉を開けたのだろう。
部屋の中にいたのはダンブルドアひとりだった。

ウィーズリー氏が巨大な蛇に襲われたとハリーが報告したとき、ダンブルドアは、ハリーがどの視点からその光景を見ていたのかと質問する。脇に立っていたのか、上から見下ろしていたのかと。
ダンブルドアは、ハリーとヴォルデモートの意識が時々同期することを知っているのだ。
「僕が蛇でした」と、ハリーは正直に答える。
アーサーを襲ったとき、ヴォルデモートはどこにいたのだろう? ハリーが蛇の視点で見ていたということは、ヴォルデモートの意識が蛇の中に入っていたことになるが、ここがわたしにはよく理解できない。

ダンブルドアは、たくさん並んでいる肖像画の中の、エバラードとディリスに呼びかけた。この名前はファーストネームらしい。「その男は、赤毛で眼鏡をかけておる」「エバラード、あなたから警告を発する必要がある。その男が、しかるべき者によって発見されるよう」
ここで注目すべきは、二人が行くべき場所をダンブルドアが指示しなかったことだ。アーサーが襲われた場所を、ダンブルドアも知っているしエバラードも知っていることになる。
ハリーたちが入室する前に聞こえていた声は、ダンブルドアと歴代校長たちの肖像画が話し合っていた声だったのだ。
5章シリウスのせりふ「ヴォルデモートはある物を求めている」は、あとで考えれば神秘部の予言のことだ。そして、アーサーが神秘部を見張っていたのはダンブルドアの命令によるものだろう。アーサーがヴォルデモートに襲われる可能性も、その場所もダンブルドアは知っていて、歴代校長たちとそれを話していたことになる。

エバラードとディリスは、額の端から姿を消した。
このふたりは歴代校長の中でもっとも有名で、そのため重要な魔法施設に肖像画がある。そして、自分の肖像画なら、自由にテレポートして訪ねることができる。そうダンブルドアが説明する。
絵の人物が近くの他の絵に移動することは、これまで何度か描写されてきた。しかし他の施設の自分の絵に行けることは、ここで初めてわかる。
そしてこの設定が「死の秘宝」で重要な意味を持つ。

ダンブルドアは不死鳥に「見張りをしてくれるかの」と言い、不死鳥はパッと消える。
不死鳥がホグワーツ内で瞬間移動できることがここでわかり、27章への伏線になっている。

次にダンブルドアは「繊細な銀の道具」に向かって何かを始めた。道具から煙が現れ、蛇の頭になった。ダンブルドアは「本質的に分離しておるか?」と聞き、煙でできた蛇の頭はふたつに裂けた。
白状すると、この場面はわたしには最後まで意味不明だった。
ローリングさんは2007年7月30日のチャットでこの問題に触れているが、それを読んでもやっぱりわからないままだった。

エバラードが戻ってきて報告する。
アーサーが襲われた階には肖像画がなく、ひとつ上の階に彼の肖像画があった。エバラードは「下の階で物音がする」と叫び続けた。何人かがやってきて、半信半疑で階下へ行き、アーサーを発見して運び出してきた。血だらけでひどい状態だった。
これを聞いていたロンはどんな気持ちだっただろう。「ロンは堪えきれないように身動きした」と書かれている。

間もなく、ディリスも戻ってきた。彼女の肖像画は聖マンゴ魔法疾患傷害病院にもある。彼女は、アーサーが病院に運び込まれたことを報告する。
ダンブルドアはマクゴナガルに「ウィーズリーのこどもたちを起こしてきておくれ」と指示する。
モリーには、フォークスが知らせることになっているらしい。

ダンブルドアは戸棚から古いやかんを取り出し、ポータスの呪文を唱える。
ポートキーは「炎のゴブレット」にも出てきたし、このあとの巻にも出てくるが、呪文を唱える場面はここが初めてではないだろうか。
そしてダンブルドアは、肖像画のうちのひとつに、フィニアス!と呼びかける。フィニアスは狸寝入りをしている。まわりの肖像画たちが彼を起こす。ダンブルドアが伝言を頼むが、フィニアスは「今日は疲れている」と拒否。フィニアスはダンブルドアと気が合わないのだろう。他の校長たちに責められ、フィニアスは渋々、自分の他の肖像画を訪ねることを承知する。

ここで、前校長ディペットのせりふから、肖像画たちは現校長に仕えるという盟約があることがわかる。
フィニアスはシリウスの先祖のひとり、フィニアス・ナイジェラスだった。
アーサーが負傷したこと、アーサーの家族がグリモールド・プレイスに行くことをシリウスに伝言するため、フィニアスが額縁のへりから出ていくとほぼ同時に、マクゴナガルがフレッド・ジョージ・ジニーを連れて来た。

ハリーとウィーズリー兄妹全員が、やかんのポートキーでブラック家へ移動した。
校長室を離れる瞬間、ハリーはダンブルドアに噛み付きたいという強い衝動にかられた。ヴォルデモートの意識と、まだ同期したのだ。