ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第22章後半)

やかんのポートキーを使って、ハリーとロン、フレッド、ジョージ、ジニーはグリモールド・プレイスの地下の厨房へ移動した。
グリモールド・プレイスにはさまざまな保護呪文がかけてあるはずだが、ポートキーで屋内へ入り込むことができるのだ。もちろん、他人は入れないように設定してあるのだろう。

この時、「出て行け!」という誰かの声が聞こえた。
声の主がシリウスだというのは、読者にも容易に想像できる。しかしこの時にクリーチャーがほんとうにブラック邸を離れ、ナルシッサのところへ行ったのだとわかるのは、37章になってからだ。

フレッド・ジョージ・ジニーは、すぐに病院に行くと言い張る。
シリウスがそれを止める。アーサーが負傷したことをどうして知ったかについて、魔法省の注意をひくわけにはいかないと。言い争いになる。
わたしはシリウスが好きになれないが、ここだけはシリウスが正しいと思う。シリウスは客観的な正しい判断をしている。それなのにフレッドは、シリウスの心の傷に塩を塗り付けるようなことばを吐く。
この時のフレッドは平常心を失っているからやむを得ないとは思うが、冷静になってからこの発言をわびる場面を入れてほしかった!

しばらくすると、不死鳥の尾羽といっしょに羊皮紙が部屋の中に出現した。
モリーからの手紙だった。「お父さまはまだ生きています。母さんは聖マンゴに行くところです」とあった。

長い長い時間を、6人は厨房の椅子に座ったまま待った。
モリーが入ってきたのは「ロンの腕時計で明け方の5時10分過ぎ」と書かれている。ロンは時計を持っていたのだ。これも誰かのお古だろうか。
「大丈夫ですよ」「お父さまは眠っています。あとでみんなで面会に行きましょう」
モリーは疲れ切った様子だったが、みんなはやっとほっとした。
モリーはハリーを抱きしめて、アーサーの危機を知らせてくれた礼をいい、シリウスにも感謝のことばをかけた。
ウィーズリー家の面々はしばらくこの屋敷に滞在することになった。病院へ行くのにここの方が便利だからだという。シリウスモリーとうまくいっていなかったはずだが、みんなの滞在を喜んでいた。

朝食のあと、みんなは寝室へひっこんだ。
ロンはすぐに眠ったが、ハリーは眠らなかった。眠るとまたあの不気味な夢を見て、今度はロンを襲うのではないかと怖かったのだ。そんな必要はないのだが、この時のハリーの気持ちはよくわかる。

「昼食の最中に全員のトランクがホグワーツから到着し、マグルの服を着て聖マンゴに出かけられるようになった」と書かれている。それまでみんなは、魔法使いの服装だったのだ。「ローブを脱いでジーンズとTシャツに着替えながら」とも書かれているので、ローブは下着の上に直接着るのだとわかる。

護衛のトンクスとマッド・アイが到着し、一行は「ロンドン市内に向かう電車」で病院へ行ったと書かれている。するとブラック邸はロンドンの郊外にあるのだろう。この「電車」はたぶん地下鉄だろう。

駅を出てしばらく歩くと、閉店中のデパートの前に出た。
ショーウインドーの中の古ぼけたマネキンにトンクスが声をかけると、マネキンがうなずいた。
一行はガラスを通り抜けて中に入った。9と4分の3番線と同じようなしくみらしい。
中は病院の受付で、魔法使いで混み合っていた。壁の張り紙の説明、見知らぬ魔法使いたちのやりとりがとても面白い。本筋に関係のないこういう描写も、この小説の魅力のひとつだ。

アーサーの病室は二階だった。
トンクスとマッド・アイは外に残り、ハリーはモリーにうながされて中に入った。アーサーはベッドの中で新聞を読んでいた。
ジョージとフレッドが事件の詳細を聞き出そうとしたが、アーサーは話をそらせた。モリーはこどもたち全員を外へ追い出し、トンクスとマッド・アイを部屋に呼んだ。
フレッドとジョージは「伸び耳」を取り出し、ロン・ジニー・ハリーにも渡した。

ダンブルドアは、ハリーがこんなことを見るのを、まるで待ち構えていたような様子なの」というモリーの声が聞こえる。
「あの坊主は『例のあの人』の蛇の内側から事を見ておる。それが何を意味するか、ポッターは当然気づいておらぬ。しかし、もし『例のあの人』がポッターにとりついておるなら……」
このムーディのせりふにぎょっとしたのはハリーだけではなかった。盗み聞きしていた全員が、恐怖にかられた表情でハリーを見た。