ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第27章前半)

トレローニーが解雇されたあとの占い学の授業は、一階の教室で行われることになった。
使われていない倉庫のような部屋だったはずだが、今は森の空き地のまっただ中というふうに見えた。床はこけがふかふかに生えて、部屋の中なのに樹木が生えていた。ダンブルドアが魔法で部屋の様子を変えたのだ。
フィレンツェは、ダンブルドアの頼みを引き受けたために、他のケンタウルスから追放され、もう森には戻れないのだと話した。このことが先の伏線になるのかなとちらっと思ったが、そういうわけではなかったようだ。

フィレンツェの授業は、星を見て大まかな世の動きを知ること、薬草を燃やして炎や煙から何かを読み取ることだった。何でも断定的に宣言したトレローニーの授業とは反対に、フィレンツェは、占いを信用し過ぎてはいけない、ケンタウルスですら時には読み違えると言う。

授業が終わったとき、フィレンツェがハリーを呼び止めた。
「ハグリッドがやろうとしていることは、うまくいきません。放棄するほうがいい」
そうハグリッドに伝えてくれと、フィレンツェはハリーに頼んだ。
「すべての生き物に対するあの人の愛情を、私はずっと尊敬していました」というフィレンツェのせりふは興味深い。ハグリッドはアホなことばかりしているように見えるが、フィレンツェにはこのように見えていたのだ。

その忠告をハグリッドに伝えたとき、ハグリッドは「世の中にゃ、職を守るより大切なことがある」と言った。
25章で、ハリーが「三本の箒」でハグリッドに会ったとき、ハグリッドは「家族だ」「なんちゅうても、血ってもんは大切だ」とつぶやいていた。
30章でわかるが、ハグリッドは旅から戻る時、腹違いの弟を連れて戻り、森にかくまっていたのだ。

クィディッチは禁止されているし、ハグリッドのことは気になるし、ダンブルドアはハリーを無視するし…というわけで、ハリーにとっての唯一の救いはDAの会合だった。メンバーはみんな目に見えて進歩していたし、DAではチョウにも会える。
みんながあこがれていた「守護霊の呪文」が、いよいよ始まった。ここの描写で、チョウの守護霊が白鳥で、ハーマイオニーのはカワウソだとわかる。

守護霊の呪文の練習の最中に、ドビーがやってきた。
屋敷妖精は、もともと生徒たちの目に触れないようにしごとをしている。厨房などを除いて、生徒と自由にしゃべることも禁じられているのだろう。ドビーは口ごもりながらも、アンブリッジが来ることをなんとかハリーに伝える。
みんなは逃げ出したが、ハリーはドラコの「足すくい呪い」をくらい、つかまってしまった。

「みんなには、図書室を探すように言いなさい。誰か息を切らしていないかどうか。トイレも調べなさい」アンブリッジがマルフォイとパンジーに指示するこのせりふは、彼女が抜け目のない女であることを示している。

ハリーはアンブリッジにひっぱられて校長室に入った。
そこには、ダンブルドアとマクゴナガル、魔法省からファッジ大臣とキングズリー、パーシー、それにハリーの知らない男がいた。この章の後半でわかるが、ドーリッシュという名の闇払いだった。
ほかの生徒が校長室に連れてこられなかったところを見ると、つかまったのはハリーだけで、ほかの生徒は逃げおおせたようだ。