ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第27章後半)

校長室に連れてこられたハリーに、ファッジが尋ねる。
「どうしてここに連れて来られたのか、わかっているだろうな?」
ハリーは「はい」と答えようとしたが、ダンブルドアがわずかに頭を振ったのに気付き、「いいえ」と答えた。
ダンブルドアの意図はわからないままだったし、先の夏休み以来ダンブルドアに不信感を持っていたハリーではあったが、ここはダンブルドアの意図に従っておこうと、とっさに判断したのだろう。これまでの5年近く、ダンブルドアはずっとハリーを助けてくれたのだから。

何を聞いてもハリーが否定するので、アンブリッジが「通報者を連れて来たほうが、話は早いでしょう」と割り込んできた。
アンブリッジは外へ出て、数分後、巻き毛のマリエッタを連れてきた。ホッグズ・ヘッドでの会合のとき、あまり気が進まないようすだった女生徒だ。
「大臣、マリエッタの母親は、魔法運輸部、煙突飛行ネットワークのエッジコム夫人です。ホグワーツの暖炉を見張るのを手伝っていたことはご存知でしょう」
このアンブリッジのせりふは、アンブリッジが魔法省の役人まで使って煙突飛行ネットワークを見張り、ハリーの弱点をつかもうとしていたとしていたことを示している。
このせりふに応えるファッジのことばl、「この母にしてこの娘ありだな」という日本語訳は変だ。この表現は、対象をけなすときの言い方じゃないのか?

マリエッタのほおと鼻を横切って、紫色の吹き出物が「密告者」という文字の形に並んでいた。こんな複雑な漢字を吹き出物で表すのは難しいから、ひらがなで翻訳すればよかったのに、と思った。
マリエッタは自分の意志でアンブリッジを訪れ、今夜必要の部屋で何かの会合が行われる予定だと言ったのだ。しかしそれ以上言わないうちに吹き出物が出現し、マリエッタはそれ以上何も言えなくなってしまった。
17章でハーマイオニーが「誰かがアンブリッジに告げ口したら、誰がそうしたか確実にわかるの」と言っていたが、このことだったのだ。

16章の「ホッグズ・ヘッド」の場面で「首から上全部を包帯でぐるぐる巻きにしている男がいた」と書かれていたが、これがウィリー・ウィダーシンという男で、アンブリッジのスパイであったこともここでわかる。アンブリッジは「ホッグズ・ヘッド」での最初の会合と、今夜の集まり、この2点の情報だけを手にしていると、ここでダンブルドアは判断したのだろう。あるいは開心術を使って、アンブリッジの心中を確かめたかもしれない。

アンブリッジは「ポッターは生徒たちと会合し、違法な組織に加わるよう勧めた」と説明を始めたが、そこでダンブルドアが口を出す。
ハリーがホッグズ・ヘッドで会合をもったのは、学生の組織をいったん解散すると決めた教育令24号が出る2日前だった。だからハリーは規則を破っていない、とダンブルドアが言った。
アンブリッジがマリエッタに、その後定期的に会合が開かれていたのかと尋ねると、マリエッタは首を横に振った。キングズリーが気をきかせてマリエッタの記憶を変えたのだと、あとでわかる。

アンブリッジの手には、みんなが署名した名簿があった。さすがのハーマイオニーも、これを回収するのを忘れていたのだ。「ミス・パーキンソンが、わたくしのの命で、何か残っていないかと『必要の部屋』にかけこみましてね」というアンブリッジのせりふにあれっと思った。パンジーは女子トイレを見にいったんじゃなかったっけ?

ダンブルドアは「ダンブルドア軍団で、ポッター軍団ではない。わしが組織し、今日が初めての会合だった」と言い出す。読者もハリーもびっくり仰天だ。
銀色の光線が走り、みんなが倒れた。マクゴナガル、ハリー、マリエッタだけが気絶しなかった。ダンブルドアは短いことばをマクゴナガルとハリーに残し、不死鳥の尾をつかんだ。そして彼は不死鳥とともにパッと消えた。
ホグワーツでは姿くらましができない、とハーマイオニーは何度も言っていた。しかしこの巻の22章で、不死鳥が校長室から消えるのをハリーは見ている。不死鳥はテレポートができるのだ。そして人間も、不死鳥につかまりさえすれば同じことができるのだろう。

ダンブルドアの手がハリーに触れたとき、ハリーは蛇になってダンブルドアに噛み付きたい衝動を感じた。これこそダンブルドアが夏休み以来、ハリーと目を合わせない理由だったのだ。
ファッジは「君の友人、ダンブルドアもこれまでだな」とマクゴナガルに言うが、マクゴナガルは毅然と「そうでしょうかしら」と返す。
ともかく、ハリーとマリエッタは寝室に戻された。