ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第33章)

ハーマイオニーは、城の敷地内を迷わずスタスタと歩いていく。ハリーには、彼女が何をたくらんでいるのかさっぱりわからない。しかし、わかっているふりをしなければならない。
ハグリッドの小屋が近づいたとき、アンブリッジとハーマイオニーがこんなやりとりをする。
「ハグリッドの小屋に隠されているの?」
「もちろん、違います。ハグリッドが間違えて起動してしまうかもしれないもの」
「そうね。もちろんあいつならやりかねない」
敵対しているふたりなのに、ハグリッドがどんな人間かという認識が一致しているのがおもしろい。

森に入ったハーマイオニーは、不自然に大きな足音をたて、大きな声で話した。
五十頭あまり(五十人と言う方が、わたしにはピンとくるが)のケンタウルスが、三人を囲んだ。これがハーマイオニーの狙いだった。ケンタウルスたちがアンブリッジをやっつけてくれると思ったのだ。
ケンタウルスはこどもを傷つけないと、30章でハグリッドが言ったことを、記憶力のいいハーマイオニーは覚えていたのだ。

アンブリッジはケンタウルスたちを「おまえたちのような半獣が…」と呼び、ケンタウルスたちを怒らせた。これもハーマイオニーの計算のうちだったのか?
アンブリッジはインカーセラスの呪文をとなえ、マゴリアンをしばり、倒れさせる。怒ったベインがアンブリッジを捕まえて空中に持ち上げ、他のケンタウルスがアンブリッジの杖を折る。アンブリッジは森の奥へと連れて行かれる。
ハーマイオニーケンタウルスたちを利用しようともくろんでいたことがはっきりして、ハリーとハーマイオニーケンタウルスたちに拉致されそうになる。

そこへ、グロウプがやってくる。都合の良すぎる展開だとは思うが…
グロウプは「ハガー」「ハーミー」と片言を口にする。ハガーがハグリッドのことだと、ハーマイオニーは気づく。ハーミーはハーマイオニーのことだ。グロウプは、たった一度見ただけのハーマイオニーの名と顔を覚えていた。
ケンタウルスがグロウプに矢の雨をあびせ、グロウプとケンタウルスたちは森の奥へ消えた。
とりあえずは助かったが、シリウスを助けに行くためには時間を無駄にしてしまったと、ハリーは腹を立てる。ハーマイオニーのおかげでアンブリッジの手を逃れたことへの感謝の気持ちは、まったくないようだ。

「ロンドンへどうやって行くつもりだったの」とハーマイオニーが言う。実際、読者としてもハリーに聞きたくなる。ホグワーツスコットランドにある。ロンドンを11時に出発したホグワーツ特急が、夜になってやっと着く距離なのだ。
「うん、僕たちもそのことを考えていたんだ」
いきなりロンの声がした。ロン、ジニー、ネビル、ルーナが来ていた。
ここを読んで、四人がハリーとハーマイオニーの行き先をどうして知ったのか気になった。「君たちが森に向かうのが窓から見えた」とロンは言うが、森の中のどこにいるのかまで知っているのはちょっと不自然だ。下草が踏み荒らされたあとをたどってきたのだろうか。

四人はDAで練習した術を駆使して、マルフォイたちから逃れてきたのだった。ハリーとハーマイオニーの杖も持ってきてくれた。
シリウスを助けにいく方法を思いついていなかったと、ハリーは打ち明ける。
ルーナが「全員飛んでいくほかはないでしょう」とのんびり言う。
「全員」が行くかどうかで、しばらくもめるが、このときのそれぞれのせりふも、いかにもキャラクターに合っていておもしろい。

六人が言い合いをしているところへ、セストラルが何頭もやってくる。ハリーとハーマイオニーが森の中のいざこざで血だらけになっていて、その血のにおいにひかれてやってきたのだ。
セストラルは乗り手が探している場所を見つけるのがとってもうまいとハグリッドが言っていた、とルーナが言う。ルーナはハリーより一学年下のはずだが、セストラルについては同じ授業を受けていたのだろう。
ハリーはとうとう、全員が同行することを承知し、「どれでも選んで、乗ってくれ」と言う。
汽車で何時間もかかる距離をセストラルが飛べるのかどうか、誰も疑問をもたなかったのだろうか?
ま、結果オーライにはなるけれど。