ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第35章後半)

六人がふたたびいっしょになれたものの、ハーマイオニーは何かの呪文で気絶させられ、ジニーはかかとが折れて歩けず、ロンは精神錯乱のような状態になっている。
この部屋から出ようと扉のひとつに近づいたとき、別の扉から三人の死喰い人が飛び込んできた。全員があぶないところで扉の反対側に出て、扉を閉めた。しかしその部屋に別の扉からも死喰い人がやってきたし、いったん閉めて呪文をかけた扉も破られた。ルーナは失神呪文を浴びて倒れ、戦えるのはハリーとネビルだけになった。

ハリーは予言を高くかかげながら走った。死喰い人たちを自分にひきつけ、ロンたちから引き離そうと思ったのだ。
それはうまくいったように見えた。死喰い人たちがハリーを追ってくる。逃げたハリーは、ふいに足下の床がなくなったのを感じた。そこは階段だった。ハリーはころげおちたが、予言の球は奇跡的にこわれなかった。

ハリーは死喰い人たちに囲まれた。そこへネビルがかけつけてくる。ベラトリックスがネビルに磔の呪文をかけ始めた。それを見たハリーは、予言を差し出そうとした。
その瞬間、また別の扉が開いて、5人が駆け込んできた。シリウス、ルーピン、ムーディ、トンクス、キングズリー。騎士団の面々だ。

なぜ騎士団が来たのか、その理由は37章でわかる。
32章、アンブリッジの部屋でハリーが「あの人がパッドフッドを捕まえた!」と言った意味を、スネイプは理解していた。あるいはそのせりふではなく、ハリーの心を読んだのかもしれない。スネイプはすぐにシリウスと連絡をとった(その方法は明かされていないが)。そして、シリウスはグリモールド・プレイスにいて無事だと知った。しかし、アンブリッジといっしょに森に行ったハリーとハーマイオニーが戻ってこないので、スネイプは騎士団仲間に、ハリーが「魔法省の神秘部でヴォルデモートがシリウスを捕らえたと、ハリーが思い込み、魔法省へ向かった可能性がある」と知らせた。
その時たまたま本部にいたのが、上記の五人だったということになる。

騎士団と死喰い人の戦いが始まった。
ここで、ムーディがあっさりドロホフにやられてしまうのが、わたしには不満だ。老いたりとはいえ、ムーディはもっと強いという設定じゃなかったのか?
トンクスはベラトリックスに倒された。ふたりとも命までは取られなかったが。

戦いの中で、予言の球はついに落ちて割れた。
球から半透明の姿がたちあがって何か言っているが、まわりが騒がしすぎて内容はわからない。
その時、ダンブルドアが現れた。ダンブルドアはまるで見えない糸でひっかけるように、逃げる死喰い人を引き戻した。

ただ、シリウスとベラトリックスだけは、ダンブルドアに気づかず戦い続けていた。
このとき、ベラトリックスの杖は赤い光線を放っている。アバダケダブラは緑の光線のはずだから、これは失神呪文なのだろう。
ベラトリックスの性格なら、あっさり即死させるよりも、磔の呪文で気がふれるまで苦しめる方がいいと思ったに違いない。
シリウスシリウスだ。ベラトリックスに向かって「さあ、来い。今度はもう少しうまくやってくれ!」などと、笑いながら相手を挑発している。明らかに戦いを楽しんでいるのだ。そばにいるハリーがどうなっているかなど、忘れ果てているのではないか。
シリウス君、あんたそれでもハリーの後見人なの?

ベラトリックスの二本目の閃光が、シリウスの胸に当たった。
シリウスの体は弧を描いて、ベールを突き抜けて沈んでいった。
このベールがいったい何なのか、物語を最後まで読んでも結局わからない。ただ、ルーピンの反応から想像すると、このベールの向こうへ行った者は二度と戻ってこないということは確からしい。
ベールは、この世とあの世を隔てる魔法アイテムのひとつで、神秘部の研究の対象なのだろう。