ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第38章前半)

この章は医務室の場面から始まる。
ハリーたち三人組と、ネビル・ジニー・ルーナがいる。
前章でハリーはポートキーによって、ロンドンからスコットランドホグワーツまで運ばれた。あとの子たちはどうやって戻ったのだろう。煙突飛行粉でホグワーツの暖炉に戻ってきたのだろうか。

マダム・ポンフリーは、あっという間にジニーとネビルの怪我を治した。そう言えば「秘密の部屋」でロックハートがハリーの骨を抜いてしまったとき、彼女は「骨折ならあっという間に直せますが、骨を再生するとなると…」と言っていた。
ロンとハーマイオニーはまだ入院中だったが、めきめき回復はしている。

ハーマイオニーが「日刊予言者新聞日曜版」の記事を声に出して読み、それをハリーたちが聞いている。ルーナだけはいつもどおりマイペースで、ザ・クィブラーに熱中し、ハーマイオニーの声を聞いていなかった。
日刊予言者新聞に「日曜版」があることは、ここで初めて出てくるという気がする。

第一面の記事の見出しは「『名前を呼んではいけないあの人』復活す」となっていて、魔法省が彼の復活を発表したことを報じていた。
「『例のあの人が再び身近で画策しているというしつこい噂は、事実無根』とついこの間まで魔法省が請け合っていただけに、この発表は、魔法界を仰天させ、困惑させている」と書かれている。
そして、ダンブルドアの名誉回復を報じ、同時にハリーをほめあげている。この一年間、さんざんハリーを中傷する記事を書いてきたのに、手のひらを返した扱いだ。
そのあとに「ハリー・ポッターの独占インタビュー」。25章でリータ・スキーターが取材し、26章でザ・クィブラーに載った記事を、ルーナの父が日刊予言者新聞に売ったのだ。

フレッドとジョージが廊下を沼地にしてしまったのを、フリットウィック先生がものの三秒で消したことが語られる。アンブリッジが消せなかった沼地だ。
これを見ると、アンブリッジの魔法力はフリットウィックに劣るようだ。
ただアンブリッジは、難しいとされている守護霊の呪文が使えるし(「死の秘宝」の魔法省の場面でわかる)ハリーの手を傷つける陰湿な罰則も、魔法としては高度なものに思える。
魔法使いにもそれぞれ、得手不得手があるのだろう。

医務室にはアンブリッジも入院していた。ケンタウルスの群れに襲われた彼女を、ダンブルドアが単身森へ行って救出したのだ。
自分を学校から追い出した相手を助けに行くとは、見上げたふるまいだと思う。ケンタウルスたちとの関係が悪化している状況の中だから、なおさらだ。
ロンが蹄の音の口まねをすると、アンブリッジがぎょっとして起き上がった。
これは、「死の秘宝」でロンがピーターの声を真似たり、蛇語を使ったりするエピソードの伏線として書かれているのだと思う。ロンは口まねが上手だという設定をさりげなく紹介しているのだろう。

ハリーはハグリッドを訪ねることにした。
小屋へ行く途中、玄関ホールでドラコたち三人組とスネイプに出会い、一悶着あったが、そこへマクゴナガル先生が現れた。31章で失神光線をあび、入院していた先生が今日退院したのだ。
マクゴナガル先生はグリフィンドールの点を増やし、「こんなすばらしいお天気の日には外に出るべきだと思いますよ」と、ハリーとドラコに声をかけてその場を収めた。
ハリーはハグリッドの小屋へ向かった。多くの生徒が外へ出ていて、ハリーに呼びかけたり手を振ったりする生徒もいた。ハリーの名誉回復が浸透しているようだった。