ハリー・ポッターと謎のプリンス(第1章)

この章と次の章は、ハリーがまったくあずかり知らないエピソードが書かれている。
ただ、話が夏休みの時期から始まることは今までの巻と同じだ。「7月半ばになろうというのに…」と書かれているので、夏休みの前半の話だとわかる。
場面は、マグルの首相の執務室。物語の中では1996年のはずだから、リアル世界のイギリス首相はメージャー首相だ。イギリス人であれば「この『政敵』とは誰だろう」と考えるかもしれない。しかし、少なくともこの章では、リアル世界との結びつきを考える必要なないだろう。建設して十年たたない橋が落ちたとか、多大な被害をもたらしたハリケーンとかは、実際に起こっていないのだから。

マグルの首相は、首相就任以来の魔法大臣とのやりとりを回想する。
首相に就任したとき、暖炉から魔法大臣が現れ、初めて魔法界の存在を知った。それが何年前のことかは書かれていないが、「アズカバンの囚人」よりは前のことになる。
二度目にファッジが現れたのは、シリウス・ブラック脱獄を知らせて警告するため。その翌年には、クィディッチワールドカップでトラブルがあったこと、ドラゴン三頭とスフィンクスを入国させることを知らせるために来た。その次には、アズカバンの集団脱走を警告するために来た。「不死鳥の騎士団」の時期だ。
そして今回、ファッジが暖炉から現れたのは、ヴォルデモートが復活したことを告げるためだった。
ヴォルデモートに席を譲れ、そうしないとマグルを大量虐殺する。ファッジはそう脅かされていた。脅迫の手段として、ヴォルデモートは橋を破壊したのだ。

ここで、ハリケーンの話になる。
「樹木は根こそぎ、屋根は吹っ飛ぶ、街灯は曲がる、人はひどい怪我をする…」とマグルの首相が言うと、ファッジは「死喰い人がやったことでしてね」と受ける。
ハリケーンと同じような被害をおこす魔法があるのだ。
またファッジは「あの人は、前回も目立つことをやりたいときに巨人を使った」と言っている。かってヴォルデモートは巨人を味方につけていた。そして今回も、ハグリッドとマクシームの工作は失敗し、彼らはヴォルデモート側についているのだ。

アメリア・ボーンズが殺されたこと、ディメンターがアズカバンを放棄したことが、ここでわかる。
そしてファッジは、自分の後任であるルーファス・スクリムジョールを、マグルの首相に紹介する。

やりとりの中でキングズリーの話が出たとき、わたしはちょっと驚いた。彼がマグルの首相の秘書官をしているという。
魔法界が、マグル界にこっそり人を派遣することがあるのだ。
魔法の能力を隠してマグル界で働くのは、かなり難しいのではないかと思う。キングズリーは相当有能らしい。