ハリー・ポッターと謎のプリンス(第6章前半)

この章は「それから数週間、ハリーは『隠れ穴』の庭の境界線の中だけで過ごした」という文章で始まっている。ウィーズリー家には何らかの保護呪文がかけられていて、ハリーは外へ出ないように言われたのだろう。それに、いくら軽はずみなハリーでも、ロンもジニーもいてモリーのごちそうがあるウィーズリー家を飛び出したいとはさすがに思わなかっただろう。
7月30日には、ハリーの誕生祝いもしてもらった。

ヴォルデモートの復活が大っぴらになった魔法界では、失踪や奇妙な事故や死亡事件が相次いでいた。
訪ねてきたルーピンが、カルカロフの死体が見つかったと知らせてくれた。『あいつが死喰い人から脱走して、一年も生きながらえたことのほうが驚きだがね。シリウスの弟のレギュラスなど、わたしが憶えている限りでは、数日しかもたなかった」
カルカロフはともかく、レギュラスについてのこの発言は不思議だ。「死の秘宝」でのクリーチャーの打ち明け話を読む限り、レギュラスは行方不明のままになっているはずだから。しかし「不死鳥の騎士団」でシリウスも、レギュラスがヴォルデモートを裏切ろうとして殺されたと知っていた。いったいレギュラスの死は、誰がどのようにして魔法界に知らせたのだろう? 目撃者のクリーチャーは口をつぐんでいたはずなのに。
ルーピンは、ダイアゴン横町のオリバンダーが行方不明だという話もした。彼がヴォルデモートに拉致されたことは「死の秘宝」ではっきりする。

「誕生祝いの次の日」というから8月1日になるが、ホグワーツから新学期の教科書のリストが届いた。
ハリーへの手紙には、クィディッチのキャプテンに選ばれたことが含まれていた。
教科書を買いにダイアゴン横町へ行く前に、グリンゴッツで働いているビルがハリーのお金をおろしてきてくれた。「なにしろこのごろは、金をおろそうとすると、一般の客なら5時間はかかる」というのだ。
個人の預金を職員が勝手におろせるのはおかしいと思うが、パスワードのような魔法はないのだろうか?それとも、書かれていないけれどハリーがあらかじめ頼んでいたのだろうか。

その日、魔法省の特別車がやってきた。
「パパが、またこんなのに乗れるようにしてくれて、よかったなあ」
ロンはやっぱり無邪気で幼稚だ。ロンがもしマルフォイ家に生まれていれば、ドラコよりさらに尊大な少年になっていたんじゃないだろうか。
さすがにアーサーは「慣れっこになってはいけないよ。これはただハリーのためなんだから」とたしなめる。

「漏れ鍋」に着くと、ハグリッドが待っていた。
いつもにぎわっていた「漏れ鍋」には客がほとんどいない。ダイアゴン横町も光景がすっかり変わっていた。