ハリー・ポッターと謎のプリンス(第7章前半)

この巻のほとんどの時期、ハリーはドラコ・マルフォイにこだわっている。マルフォイがやっていることをつきとめ、マルフォイの弱点をつかもうと必死だ。ほかに大切なことがたくさんあるのに、マルフォイ憎しを優先して行動するハリーのようすは、読んでいてけっこうイライラする。
原作者は、ハリーのこういう行動を全面的に肯定しているわけではない。ロンとハーマイオニーがハリーほどマルフォイのことに関心を持っていないことを描き、三人のふるまいを客観的に見ている。ハリー視点で書かれてはいるが。

しかし、ハリーひとりが必死にドラコのことを考えていた成果はあった。
アズカバンにいる父親に代わってドラコが死喰い人になったのではと思いついたのだ。マダム・マルキンの店で、ドラコは腕を見せたくないようなそぶりをしていたし、逆にボージンの店では、左腕を見せておどかしていたようだった。

ハリーたちが台所へ行くと、フラー・デラクールがいた。フラーはビルとの結婚を前に、結婚式の準備のことをしあわせそうにあれこれしゃべっている。しかしジニーとモリーはフラーに反感を持っているようだ。

ホグワーツへ行く日の朝が来た。魔法省から差し向けられた自動車がやってきた。
フラーはハリーにお別れのキスをした。続いてロンが進み出ると、ジニーが足を突き出し、ロンはそれにひっかかってぶざまに転倒した。
いったい何のためにジニーはそんなことをしたのか。単に、ロンに意地悪をするだけの目的しか考えられない。「不死鳥の騎士団」のブラック邸で、自分のいたずらをクルックシャンクスのせいにした時といい、今度といい、ジニーはどんどん嫌な子になっていくようだ。
「賢者の石」や「秘密の部屋」の時期には、けなげでかわいかったのに。

自動車はキングズ・クロス駅に着いた。
ロンとハーマイオニーは監督生の車両に行くので、ハリーはひとりになった。列車が出るまでの数分を利用して、ハリーはアーサーにドラコに関する疑惑をうちあけた。しかしアーサーはあまり真剣に受け取ってくれなかった。

列車に乗り、ジニーを誘ったが、ジニーは「ディーンと落ち合う約束をしてるから」と断られた。ジニーを見送るハリーは「ズキンと奇妙に心が波立つのを感じた」と書かれている。
このとき、ハリーがジニーを始めて意識したのだろうか。
結局、ネビルとルーナが同じコンパートメントの仲間になった。ルーナによると、ザ・クィブラーの発行部数が増えたという。

ネビルは魔法省の戦いで杖が折れたので、新しい杖を買ってもらった。その翌日にオリバンダーが失踪したのだという。
ネビルは祖母がハリーをほめたたえていると言い、「ばあちゃんは君を孫に持てたら、ほかに何もいらないだろうな」とつぶやいた。このせりふに、ネビルの素直さが表現されていると思う。もしネビルが、ハリーやロンのような負けず嫌いなら、こんなことを正直に言わないだろうから。わたしがネビルを好きな理由のひとつだ。

しばらくすると、ロンとハーマイオニーが戻ってきた。
「ランチのカート、早く来てくれないかなあ。腹ペコだ」とロン。ロンが食いしん坊だという描写がここにも出てくる。
ドラコ・マルフォイが監督生のしごとをしていないと、ロンが言う。
ここでロンが「下品な手の格好をやって見せた」と書かれているのは、イギリス人にはわかる表現なのだろうか。わたしにはさっぱりわからない。こういうのは、注をつけるかあとがきで解説するべきだ。そこまでやってこそ翻訳だろう。

そこへ、三年生の女子生徒が手紙を持ってきた。ネビルとハリー宛で、スラグホーンからのランチの誘いだった。