ハリー・ポッターと謎のプリンス(第7章後半)

スラグホーン教授の手紙は「紫のリボンで結ばれた羊皮紙の巻き紙」と書かれている。日本の時代劇に出てくる手紙も巻き紙が多いと、ドラマの中の手紙を連想してしまった。
このコンパートメントで手紙を受け取ったのはハリーとネビルだが、同じ手紙をほかに何通も作ったはずだ。魔法でコピーしたのだろうか。物を複製する魔法は「死の秘宝」などで登場するが。
H.E.F.スラグホーンという名前はここにしか出てこないので、ファーストネームの「ホラス」以外はわからない。

ネビルといっしょにスラグホーンのところへ行く途中、ハリーはチョウ・チャンとマリエッタ・エッジコムを見かけた。
「マリエッタは厚化粧をしていたが、顔を横切って奇妙なニキビの配列が残っているのを、完全に隠しおおせてはいなかった」と書かれているのにおどろいた。ハーマイオニーの魔法によるニキビはまだ残っていたのか。校長室の一件で目的は果たしたのだから、そのあとすぐ消したのではと思っていたのだ。マリエッタの顔をそのままにしているハーマイオニーにも、ここでそれを見てほくそえんだハリーにも、無性に腹が立った。
マリエッタの親(母親は魔法省の役人だった)にも対処できなかったのだから、並の魔法使いには解けない魔法なのだろう。でも謹厳公正なマクゴナガルか呪文学のエキスパートであるフリットウィックが間もなく直してくれる、と思いたい。

スラグホーンのいるコンパートメントに行くと、そこにはほかにも大勢の生徒がいた。
スリザリン生のブレーズ・ザビ二(背の高い黒人と書かれている)、ハリーの知らない7年生がふたり、コーマック・マクラーゲン、そしてジニー。すぐあとにマーカス・ベルビィという名前が出てくるが、上記の7年生のひとりだろうか?
スラグホーンがひとりひとりに声をかけるのを聞いて、ハリーはさとった。ここに呼ばれたのは、有力者や有名人とつながりがある生徒たちだと。ただジニーだけは違った。たまたま魔法がうまいのを目にして呼んだのだ。しかし、ホグワーツ車内で「こうもり鼻くその呪い」を使うとは。
わたしが教師なら、ジニーの魔法をほめるより、生徒どうしでそういう呪いを使うのを叱るけれど。実際ジニーはあとで「罰則をくらうかと思ったけど」と言っていた。

スラグホーンのパーティが終わったあと、ハリーは突然思いついた。透明マントをかぶってザビ二のあとについていけば、スリザリン生どうしの会話を盗み聞きすることができる。マルフォイが何かしゃべるかもしれない。
ハリーはそれを実行する。ここは、読んでいてとても不愉快だ。もしドラコが透明マントを着てグリフィンドール生のいるコンパートメントにしのびこんできたらどんな気持ちか。相手がスリザリンなら、相手がドラコなら、どんな卑劣なことをしてもいいと思っているのか。
ダイアゴン横町の場面で、ドラコとボージンの会話を「のび耳」で盗み聞きした行為も卑劣ではあった。でもあそこでは、それほど腹は立たなかった。誰もが入れる店の中だったからだ。でもスリザリン生だけがいるコンパートメントは、個人の家庭に準じるような場所ではないだろうか。

ドラコは、自分がスラグホーンに呼ばれなかったことに負け惜しみをを言ったりしていたが、やがて「来年は僕はホグワーツにいないかもしれない。もっと次元の高いことをしているかもしれない」と話し始める。「あの人」がOWLやNEWTの成績を気にするはずがないと。
ドラコがヴォルデモートに認められたことを喜び、誇りにしていることが伝わってくる。しかしさすがに、具体的なことは言わなかった。

ハリーは見つからなかったつもりでいたが、ドラコはとっくに知っていた。ザビ二が戻ってきたとき、すでに不自然な気配に気づいていたのだ。
列車がホグズミード駅に着くと、ドラコは他のメンバーを先に行かせ、荷物棚の上にいるハリーに向けて「ペトリフィカス トタルス」の呪文をかけた。ハリーはぶざまに床に落ちた。ドラコはハリーの鼻を靴で踏みつけた。鼻が折れた。
ドラコはハリーに透明マントをかぶせ、コンパートメントを去った。

わたしはここを読んで、いい気味だと思った。
この原作者、主人公の卑劣な行為を書くのも、そのむくいを書くのも容赦はない。

ここで、列車がロンドンへ向けて戻るという描写がある。ドラコもハリーもそう思っている。
ホグワーツ特急の車庫はどこにあるのだろう? もしこの路線がホグワーツ専用で、ほかの列車が通らないのであれば、このまま列車をホグズミード駅にとどめておく方が合理的では? 毎日ロンドンとホグズミードを往復しているわけではあるまい。
それとも、この列車は「ホグワーツ特急」として走る以外に、他の路線で他の役目をしている時期があるのだろうか? 車内販売の魔女は、ホグワーツの生徒を運ぶ時期以外は別の場所でしごとをしているのだろうか?