ハリー・ポッターと謎のプリンス(第9章後半)

魔法薬学の教室に入ると、生徒は12人だった。
昨年度まではスリザリンとの合同授業だったが、六年生では四つの寮が全部いっしょに授業を受ける。スリザリンが4人、レイブンクローが4人、ハッフルパフがひとり、そしてグリフィンドールがハリーたち3人。
ここに来なかった生徒は、最初から魔法薬学を希望しなかったか、それともOWLで合格点をとれなかったかのどちらかということになる。

スラグホーンが入ってきた。
「ハリーとザビニに対して、スラグホーンは特別に熱い挨拶をした」と書かれている。ザビニは母親が有名な女優だと、7章に書かれていた。魔法界にも女優という職業があったのだ。それにしても、最初の授業が始まる瞬間から露骨なえこひいきをするとは、教師としてどうなのか。
ホグワーツはもともと教師のえこひいきがまかり通っている学校だから、しかたがないだろう。教師のえこひいきがストーリーを面白くしていることも事実だし。

ハリーとロンが教科書を買っていないと聞くと、スラグホーンは棚から古びた本を2冊出してきてハリーとロンに渡した。
そのあとスラグホーンは、煎じておいた魔法薬をいくつか生徒たちに見せる。ハーマイオニーは次々にその薬の名前や効能を言い当てる。スラグホーンはグリフィンドールに加点する。スネイプだったら加点どころか、嫌みを言って減点しかねない。

「魅惑万能薬」についての説明がおもしろい。
「魅惑万能薬は、実際に愛を作り出すわけではない。愛を創ったり模倣したりすることは不可能だ。それはできない。この薬は単に強烈な執着心、または強迫観念をひきおこす」
つまり、魔法で愛を生じさせることはできないわけだ。
「魅惑万能薬」はAmortensia だが、10章などに出てくる love potion とは別物なのだろうか。

スラグホーンは「生ける屍の水薬」を調合するようにと指示し、いちばんよくできた生徒にほうびとしてフェリックス・フェリシスを進呈すると宣言する。
ハリーが借りた教科書を開けてみると、元の持ち主がいっぱい書き込みをしていて、非常に読みにくかった。しかし、その書き込みの指示どおりにしてみると、鍋の中の薬の色が教科書の記述のとおりに変化した。かき回す方法も、書き込みどおりにするとうまくいった。いつもならいちばん早く仕上げるのはハーマイオニーなのだが、今回はハリーだけが完璧に煎じることができた。

「君は明らかに母親の才能を受け継いでいる。彼女は魔法薬の名人だった」とスラグホーンは言う。
このせりふで、スラグホーンは過去にも魔法薬学を教えていたことがはっきりする。リリーが魔法薬学を得意としたことも。
しかしここでスラグホーンは完全に勘違いをしてしまった。リリーは実力でよい成績をとったが、ハリーの今日の成功はカンニングによるものだ。

寮の談話室に戻ってから、ハリーはロンとハーマイオニーに教科書のことを打ち明けた。
通りがかったジニーが動揺し、怒っているのをハリーは知った。ジニーがリドルの日記を思い出してしまったのは明らかだ。
ハーマイオニーがハリーの教科書に「スペシリアス・レベリオ」の呪文をかけたが、本に変化はなかった。何かが取り付いているとか、怪しい魔法がかかっているとかではなさそうだ。
しかしこの時点では、「この本を使う者をいったん喜ばせ、その心をとりこにしてあとで利用する」という、たとえて言うならいかがわしい投資商法のようなことを誰かがたくらんでいることも考えられるはずだ。敵を持つはずのハリーが、単純に有頂天になってしまったのは情けない。

本の裏表紙には「半純血のプリンス蔵書」と書かれていた。
原文は The Book is the Property of the Half-Blood Prince。