ハリー・ポッターと謎のプリンス(第11章)

六年生になって、どの課目の勉強もきびしくなった。宿題がどっさり出され、多くの科目で無言呪文が要求された。しかしハリーにとって魔法薬学だけは楽だった。プリンスの教科書の書き込みにしたがっていればうまくいったからだ。

ハリーはこの年度、クィディッチのグリフィンドールチームのキャプテンに選ばれていた。チームに入りたいという希望者が今年はとくに多いようだ。ハーマイオニーは、ハリーが人気者になったからだと言う。その説明でハリーの魅力をあげていくが、それにいちいち嫉妬深く反応するロンの態度がおもしろい。ローリングさんはこういう細かい描写が得意だ。

二週目の土曜日、魔法薬学の新しい教科書が届いた。
ハリーは届いた新しい教科書とプリンスの教科書の表紙を「ディフェンド」の呪文ではずし、表紙を取り替えて「レパロ」の呪文で貼付けた。ハリーはカンニングを続けるつもりなのだ。

クィディッチの選手の選考は、午前中いっぱいかかった。
「グリフィンドール生の半数が、選抜を受けたのではないかと思うほどだった」「候補者を十人一組に分け、競技場を一周して飛ぶように指示した」と書かれている。そして、五組目までの具体的な描写があるが、五組で終わりではなく、まだまだ続いた。
いったいグリフィンドール生は何人いるのだろう? 「賢者の石」の飛行訓練では、一年生のグリフィンドール生とスリザリン生を合わせて20人だった。しかしローリングさんは途中で設定を変えたらしく、人クラスの人数が多くなっている。ひとクラス30人ぐらい、一学年120人ぐらいというのが妥当なところだろうか。

選抜の結果、ジニーを含む3人のチェイサーと2人のビーターを決めた。
最後にキーパーを決めるとき、コーマック・マクラーゲンとロンとの争いになった。コーマックが4回、ロンが5回ブロックしたので、ロンが選ばれた。
実はハーマイオニーがコーマックに錯乱呪文をかけてじゃまをしていたことにハリーは気づいた。
どの登場人物も「百パーセント善人」には描かないのがこの作品だが、しかし、ここでハーマイオニーにこんなことをやらせないでほしかった。

午後、ハリーたち3人はハグリッドを訪ねた。
アラゴグが死にかけていると、ハグリッドは悲しんでいた。危険な動物が好きなハグリッドだが、アラゴグとは十代のときから、50年以上いっしょに過ごしたのだから、別れが近いことがいっそうつらいのだろう。
ハグリッドとの会話でもうひとつ、読者にわかったことがある。魔法省にあった逆転時計の在庫が、魔法省の戦いで全部壊されていたことだ。日刊予言者新聞に書いてあったと、ハーマイオニーが言う。
逆転時計というのは、簡単に作れるものではないらしい。原作者としては、こんな「何でもあり」のアイテムを残しておいて、ヴォルデモートに使われては大変と、抹殺してしまったのだろう。

ハグリッドの小屋から城へ戻ると、スラグホーンに出会った。スラグホーンは夕食のパーティにハリーを誘った。スネイプの罰則があるので、ハリーが出席するのは無理だったが。
ホグワーツ列車のときと同じように、スラグホーンはお気に入りの生徒だけに声をかけているのだ。
夏休みにスラグホーンの家に行ったときは、社会的地位のある親族を持つ生徒だけを選んでいるように見えたが、列車のパーティではジニーの腕を見込んで声をかけた。そして今度は、マグル生まれであるハーマイオニーもパーティに招いている。
出自による差別をしないことは評価できるが、そもそも、教師が特定の生徒だけをパーティに呼ぶなんてことをやっていいのか。
ホグワーツは元々教師のえこひいきがまかり通っている学校だから、しかたがないのかもしれない。スネイプしかり、トレローニーしかり。校長のダンブルドアにしてからが、「賢者の石」の学年末パーティでスリザリンに対して究極の意地悪をやっているのだから。