ハリー・ポッターと謎のプリンス(第12章前半)

ハリーは策略をめぐらして手元に残した「上級魔法薬」の教科書を読んでいた。
「ふだんは、ベッドに横になって教科書を読んだりはしなかった。(中略)ハーマイオニー以外の者がそういう行動を取るのは不道徳であり、ハーマイオニーだけはもともとそういう変人なのだ」という記述は、読者を楽しませるためのものだろう。入学前の1ヶ月、ハリーはけっこう熱心に買ってきた教科書を読み、魔法史の教科書で見つけた名前をふくろうにつけている。あれは未知の世界に行くワクワクがあったからで、魔法界を十分に知ってしまった今は、教科書に魅力はない。
ただ、プリンスの書き込みでいっぱいのこの教科書だけは、ハリーをひきつけた。

フリアート(耳塞ぎ)はこの書き込みにあった呪文のひとつだが、これの使用をハーマイオニーが拒否したことに喝采を送りたい。
レビコーパスの呪文をためしてみたら、ロンが空中につりあげられてしまった。あわてて同じページに書かれていた反対呪文を見つけて事なきを得たが、もし反対呪文がわからなかったら、寮監のマクゴナガル先生を呼ぶはめになっただろう。
ところで、さらりと書かれているが、この事件はハリーが初めて無言呪文に成功した事例でもあったのだ。

つりあげられたロンは、楽しかったできごととしてハーマイオニーに話したのだが、ハーマイオニーは眉をひそめた。ワールドカップの会場で、仮面をかぶった死喰い人たちがマグルの管理人一家をつりあげて悪ふざけをしていたのを思い出したのだ。
同じ呪文を使ったのかどうかわからないが、同じことを彼らがやっていたのは確かだ。
ハーマイオニーは「同じ呪文だ」という意味のことを言っていたから、ワールドカップのときにその呪文を聞いたのかもしれない)

この日は、ホグズミードへ出かける日だった。
ハニーデュークスの店に3人で行き、次に「三本の箒」に向かった。
建物の前にマンダンガスがいた。ハリーを見てあわてたマンダンガスはトランクを取り落とし、中身がぶちまけられた。
ロンが銀色のゴブレットを手にとり「どっかで見たような……」とつぶやく。ハリーはその品がブラック家の物だと気づいた。
しかしマンダンガスはトランクといっしょに姿くらましで逃げた。

そこへトンクスが現れた。
「マンダンガスは、いまごろたぶんロンドンにいる。喚いてもムダだよ」
姿くらましで飛べる距離というのは、どのくらいなのだろう。ずっと知りたいと思っているのだが、少なくともスコットランドからロンドンへひととびで行ける距離らしい。
マンダンガスがここにいたのは偶然だが、トンクスはたぶん偶然ではない。ハリーが学校を離れるときには人知れずハリーを見守るように、指令を受けていたのではないか。

しばらくしゃべってから、ハリーたちは学校へ戻ることにした。雪がどんどんひどくなってきたのだ。
「ハリーはふとジニーのことを思った」と書かれている。ハリーがジニーを異性として意識し始めたのはこの時期なのだろう。ジニーの方は、入学前からハリーを好きだったけれど。