ハリー・ポッターと謎のプリンス(第12章後半)

ホグワーツ校とホグズミード村を結ぶ通りは、ハイストリート通りと呼ばれている。
ホグワーツの正門から村の入り口まで、どのくらいの距離を歩くのだろうか。具体的には書かれていないが、1キロメートル弱というところだろうか。
また、原作者が映画撮影のために書いた図を見ると、ホグズミード駅とホグズミード村は学校をはさんで反対側にある。これはなぜだろう。

雪が降る中、ハリーたち三人はホグズミード村を出て学校へ向かった。少し前に同じ店を出たケイティ・ベルの声が聞こえた。話している相手はリーアンという名前の女生徒だが、フルネームや寮はわからない(見逃しているだけかも)。ケイティ・ベルはクィディッチのグリフィンドールチームの選手としてすでに名前が出ている。
ケイティとリーアンは何か言い争っていた。

ケイティが持っていた包みをリーアンがひっぱり返し、包みが落ちた。その瞬間、ケイティが空中に飛び上がり、悲鳴をあげて苦悶の表情になった。ハリーたち三人が助けようとしたが、ケイティは雪の上に落ち、苦しみもだえ続けた。

ハリーはまわりを見回したが人がいる気配がない。「助けを呼んでくる!」と、ハリーは学校の方に向かって走り出した。
いつもなら、三人の中ではハーマイオニーが率先して行動するが、ここではハリーがてきぱきと対処している。「不死鳥の騎士団」でDAのリーダーを務めたことが、ハリーを成長させたのだろう。
さいわいなことに途中でハグリッドに会った。状況を知ったハグリッドは、現場にかけつけ、ケイティを抱き上げてすぐさま学校の方向へ走り去った。ハグリッドも、珍しくてきぱきと行動した。

ハーマイオニーはリーアンに事情を尋ねた。包みが破れたときに、ケイティがおかしくなったという。
ケイティが「三本の箒」のトイレから出てきたとき、その包みを持っていた。ホグワーツの誰かをおどかすために、自分が届けなければいけないと言っていた。誰から受け取ったのかは言わなかった。リーアンはそんなことをしてはいけないと止めようとして言い争いになったのだと言う。

包みからは緑色の物が見えていた。ハリーには見覚えがあった。
「秘密の部屋」4章で、ハリーが煙突飛行粉での移動に失敗してボージン・アンド・バークスの店に迷い込んだとき、店に飾ってあった。「手を触れないこと。呪われたネックレスーーこれまで19人の持ち主のマグルの命を奪った」と書かれていたのだ。この巻の6章でも、三人はそのネックレスを同じ場所で見ている。

ハリーは、ドラコ・マルフォイが6章でボージン・アンド・バークスの店に行き、何かの取り置きを頼んだことと、ここにある呪いのネックレスを結びつけて考えた。
ハリーの想像は、半分はずれて半分当たっていた。ネックレスをケイティに持たせたのはドラコだとあとでわかるが、6章でドラコが話していたのは別の商品についてだった。
半分当たってはいたけれど、この時点でのハリーは、冷静に推理をしたのではなく、ドラコ憎しの感情からこじつけているとしか思えない。読者から見ても、ロンやハーマイオニーから見ても。

学校に戻ると、マクゴナガルが石段を駆け下りて迎えた。ケイティはすでに医務室へ運ばれたようだ。ケイティが触れた物だとネックレスを見せると、マクゴナガルはフィルチに「すぐにスネイプ先生のところに持っていきなさい。ただし、決して触らないように」と指示した。マクゴナガルも、闇の魔術にかけてはポンフリーよりスネイプが詳しいと認識しているのだ。

ハリー・ハーマイオニー・ロン・リーアンの四人はマクゴナガルの部屋に入り、いきさつを報告した。動揺しているリーアンを医務室に送り出したあと、マクゴナガルは改めて残る三人に状況を聞いた。
ここでハリーは「ドラコ・マリフォイがケイティにネックレスを渡したのだと思います」と発言した。そして、夏休みにボージン・アンド・バークスの店でドラコを見た話をした。しかし当然ながら説得力はない。そして、決定的な事実がわかった。ドラコはマクゴナガルの罰則を受けて城にいたのだ。ホグズミードには行っていなかった。
「話してくれたことはありがたく思います。しかし…」と、ハリーのふるまいをいったん肯定した上で反論するマクゴナガル先生は、さすがに冷静かつ公平だ。

もしハプニングが起こらず、ケイティが城までネックレスを持ってきていたら?
フィルチが詮索センサーを手に、戻ってくる生徒たちを待ち構えているのだから、そこで怪しい品物だと発覚し、没収されるはずだ。
「今年は厳重な警護対策を施してあります。あのネックレスが私たちの知らないうちに校内に入ることは、とても考えられません」とマクゴナガルも言っていた。

ひとつ気になることがある。
ハリーは自分のマフラーをはずして、ネックレスを包んだ。あのマフラーは、その後どうなったのだろうか? 呪いのネックレスを包んだことで、マフラーに呪いが移ることはないのだろうか?
またネックレスそのものはどう処分されたのだろうか。スネイプ先生なら、ネックレスから呪いを抜くこともできそうな気がするけれど。