ハリー・ポッターと謎のプリンス(第13章前半)

ダンブルドアの最初の個人授業は、年度始めのパーティから一週間たたないうちだった。
9章の彼の手紙に「土曜日に個人教授を始めたいと思う。午後8時にわしの部屋にお越し願いたい。今学期最初の一日を、きみが楽しく過ごしていることを願っておる」と書かれていたからだ。
リアル世界の1996年9月1日は日曜日だから、この「土曜日」は9月7日ということになる。しかし、ハリー・ポッターの世界の曜日とリアル世界の曜日が食い違っていることは、「賢者の石」初頭の記述でわかっているから、ほんとうのところはわからない。

そして、この13章。
ダンブルドアの不在に触れたあと、「ダンブルドアがどこにいるにせよ、月曜の個人教授に間に合うように戻るのだろうかと、ハリーは心配になった」と書かれている。あれ? 月曜日に次の個人授業があるとどこかに書かれていただろうか?

リーアンの事件は10月なかばだった。さらにそのすぐあとでダンブルドアの第2回の個人授業の日が来た。校長室に入ると、話題はすぐケイティのことになった。まだ入院中で容態は思わしくないが、スネイプ先生の処置のおかげで、呪いが急速に広がるのはくいとめられたとダンブルドアが言う。
ハリーは「どうしてマダム・ポンフリーじゃないんですが」と言い、とがめられる。ハリーの生意気な性格がよくわかる場面のひとつだ。

次にふたりの話題は、マンダンガスがシリウス家の物を盗んでいることで、ハリーが持ち出した話題だ。
ダンブルドアがヴォルデモートに関する重要なことを教えようとしているのに、私的なことを言い出すのはどうかと思った。せめて授業が終わってから言うべきではないか。
しかしダンブルドアは怒りもせずに、「これ以上、シリウスの昔の持ち物を持ち逃げすることはできぬゆえ、安心するがよい」と言った。
マンダンガスの泥棒をやめさせることができるのなら、なぜ始めからそうしなかったのだろう? 彼の手癖が悪いことは最初からわかっているのに。ある程度は大目に見ることで、彼を情報屋として使いこなしてきたのだろうか。
ま、彼の泥棒行為のおかげで、両面鏡がアバーフォースの手に入るのだけど。

ハリーはケイティの事件でドラコを疑っていることも持ち出すが、これはあっさり無視されてしまった。「死の秘宝」33章のスネイプの記憶を読むと、この時点でダンブルドアは、ドラコがダンブルドア殺害命令を受けたことを知っていた。ケイティの事件の黒幕がドラコであることも見当がついていただろう。

ダンブルドアがまず見せてくれたのは、カラクタカス・バークの記憶だった。ボージン・アンド・パークスの経営者だ。現在の経営者か先代かはわからない。70年も前だから、先代、あるいは先先代かもしれない。
彼の店に、身なりの貧しい妊娠した女性がやってきて、ロケットを売ろうとした。「スリザリンのロケット」という認識はその女性にあったが、価値は知らなかった。呪文をかけて本物と判明したが、10ガリオンでどうかという店主の申し出に、女性は喜んでいた。
それが、バーク氏の話だった。話の中に女性の名前は出てこなかったが、スリザリンのロケットを持っていたのだから、メローピー・ゴーント以外にあり得ない。

メローピーは魔法で食べ物や必要な品を手に入れることができたのでは、とハリーは尋ねる。
「死の秘宝」でわかるが、魔法で食べ物を作り出すことはできない。しかし食べ物が少しでもあれば、それを増やすことはできる。だから食べるにも困らないということは起こらないはずだ。
ダンブルドアは「夫に捨てられたとき、メローピーはもう魔女でいることを望まなかった。あるいは、絶望で魔力が枯れてしまったことも考えられる」と言っている。

そして次は、ダンブルドア自身の記憶を見せてもらう。11歳のトム・リドルの姿を、ハリーは目の当たりにする。