ハリー・ポッターと謎のプリンス(第16章)

舞台は前章から一転、ウィーズリー家の台所になる。クリスマス休暇でハリーはウィーズリー家に居候しているのだ。
貧乏なウィーズリー家にとって、ハリーが居候するのは迷惑じゃないのだろうか。
わたしは、なぜハリーが自分の食費を払うことを申し出ないのか、ずっと不思議に思っていた。たとえモリーが受け取らないとわかっていても、申し出るべきではないのかと。「死の秘宝」のハーマイオニーのせりふによって、食べ物は魔法で増やせることがわかって、やっと納得した。

ウィーズリー家の台所で、ハリーとロンは芽キャベツの皮を剥きながら話している。
スネイプがドラコを手伝おうと言っているのに、ドラコはそれを拒否していたこと、スネイプがドラコの母親と「破れぬ誓い」をしていたことをハリーは話す。
「破れぬ誓い」は、破ったら死ぬのだとロンは言う。ロンが5歳ぐらいのとき、フレッドとジョージがロンに破れぬ誓いをさせようとして、父親に叱られた話なども出てくる。ロンが5歳なら双子は7歳前後、まだ魔法をまともに使えない年齢のはずだが、命にかかわる魔法を試すとはとんでもないことだ。

ここで、その双子が実際に登場、魔法を使わずに芽キャベツをむいているロンたちをからかう。
ここでロンとハリーが魔法を使っても、魔法省からのおとがめはないはずだ。しかしさすがに魔法省職員の家庭だから、未成年に対する制限を守っているのだろう。
「あと2ヶ月ちょっとで、僕は17歳だ」とロンが言っているが、ロンの誕生日が3月1日だとわかるのは第18章だ。

クリスマス・イブがやってきた。
ここの描写から、魔法界にはテレビはないけれど木製のラジオがあるとわかる。ただ、電気で動いているかどうかはわからない。おそらく電気は使われていないだろう。動力源(?)は魔法エネルギーに違いない。

ウィーズリー家を訪ねてきたルーピンとハリーの会話は、印象的だ。
「君はあくまでもセブルスを憎みたいんだね」
「わたしには理解できる。父親がジェームズで、後見人がシリウスなのだから、君は古い偏見を受け継いでいるわけだ」
ルーピンの公正な見方がよくわかるせりふだ。学生時代から、ルーピンはいじめに加わっていなかった。ただ、いじめを止める勇気がなかっただけだ。
この時期、ルーピンは狼人間の社会に入って、スパイ活動をしていた。ウィーズリー家でのクリスマスはほっとできる貴重な時間だったに違いない。
グレイバックがどんな狼人間であるかも、ここで語られる。

クリスマスの朝。
ラベンダーからのプレゼントにロンが閉口したり、クリーチャーからハリーあてにウジ虫が贈られてきたりという事件があった。モリーからは、いつものセーターだった。

朝食のとき、魔法大臣スクリムジョールがパーシーを伴ってやってきた。
スクリムジョールは口実を設けてハリーを呼び出し、魔法省に協力するように依頼する。また、ダンブルドアのことをさぐろうとする。
ハリーは当然ながら断る。「不死鳥の騎士団」の時期、ハリーをさんざんおとしめた魔法省なのだから。
ただ、ここでハリーがスタン・ジャンパイクのことを持ち出すのは僭越だと思う。ハリー自身が受けた仕打ちを話すだけで十分ではないか。