ハリー・ポッターと謎のプリンス(第27章後半)

ドラコがダンブルドアを追い詰めたとも見えるこの場面だが、ダンブルドアの態度には余裕が見える。
ドラコに「我々の側に来るのじゃ。我々は、きみの想像もつかぬほど完璧に、きみを匿うことができるのじゃ」と誘いかける。母親もすぐ保護しようという。
しかしドラコとしては、このダンブルドアの申し出をすぐには信用できないだろう。
ただ、ドラコに殺人はできないというのは、ダンブルドアが言ったとおりだ。殺す気なら、とっくにとどめを刺している。

そこへ階段を登ってくる足音がして、四人の死喰い人が屋上にあがってきた。
アミカス・カロー、アレクト・カロー、グレイバック、それにもうひとり。
ここでのやりとりで、ドラコがグレイバックを嫌っているのがわかる。そしてグレイバックは、未成年のこどもたちが大勢いるホグワーツへ入り込む機会を逃したくなかったのだということも。

グレイバックがダンブルドアを殺そうと言い出したとき、「『だめだ』四人めの死喰い人が鋭く言った。厚ぼったい野蛮な顔をした男だ」と書かれている。「我々は命令を受けている。ドラコがやらねばならない」
この四人目って、誰だろう? 「死の秘宝」9章に出てくる「色黒の死喰い人」と同一人物なら、ドロホフということになるが。

そこへスネイプが現れ、その場の様子を素早く見回した。彼は状況をすぐに理解したに違いない。弱り切って壁にもたれかかっているダンブルドア、おびえた表情で震えているドラコ、グレイバックが他の三人と仲間割れしていること、などなど。
ただ、透明マントに隠れているハリーに気づいたかどうかはわからない。

ダンブルドアはセブルスに呼びかけた。
「セブルス……頼む……」
ここを読んだ時点で、わたしはスネイプの本心を知らなかった。ただ、この「頼む」が命乞いでないことだけは感じた。「自分が死んだあとのことを頼む」という意味かと思って読んでいた。
「かねての予定どおり、今ここで殺してくれ」という意味だとわかったのは、「死の秘宝」の33章を読んでからだった。
「その非情な顔の皺に、嫌悪と憎しみが刻まれていた」
この「嫌悪と憎しみ」の意味も、「死の秘宝」33章までわからなかった。

スネイプは「アバダケダブラ」を唱えた。緑の閃光がダンブルドアの胸に当たった。
ダンブルドアの体が浮き上がり、防壁を越えて塔から落ちていった。

浮遊呪文は使っていないはずなのに、なぜダンブルドアの体が防壁を越えてまで浮き上がったのだろう?この理由は最後までわからなかった。