ハリー・ポッターと謎のプリンス(第28章後半)

ハグリッドの小屋は燃えていたが、愛犬ファングは無事に助け出されていた。
ハリーはハグリッドの小屋の火を消そうと、アグアメンティの呪文で水を出した。ハグリッドはいつも持っているピンクの傘を構えて、同じ呪文を唱えた。傘の先から水が飛び出した。
ハグリッドがピンクの傘を使う場面はあちこちに出てくるが、折られたはずの杖がこの傘に仕込まれていることがいちばんはっきりわかるのがこの場面だと思う。

「大したこたあねえ」「このくらいなら、ダンブルドアが直せる……」
ダンブルドアの死を知らないこのせりふは痛々しいが、わたしはそれよりも、火事で焼かれた家が魔法でもとどおりになるということに驚いた。
魔法使いがもし現実にいるなら、火事や災害で家が破壊された地域に行って、全部直してほしい。
ダンブルドアなら」と言っているから、魔法使いなら誰でもできるということではなさそうだけれど。

スネイプがダンブルドアを殺したとハリーは話したが、ハグリッドは信じなかった。
スネイプが死喰い人といっしょに逃げたのは、ダンブルドアがそう命じたからだとハグリッドは言い張る。ま、それは結局事実だったけれど…

城から大勢の生徒が起きだしてきていた。
ハリーとハグリッドは天文台の塔に近づいていった。ハグリッドは塔の上の闇の印に気づいた。誰かが殺されたのだ。
ふたりは塔の下の、生徒や教師たちがダンブルドアの遺体を取り囲んでいるところにたどりついた。
ハグリッドはやっと、死んだのはダンブルドアだったと知った。
どれほどショックだっただろう。ダンブルドアはハグリッドにとって、父親と同じだった。いや、父親であり上司であり、人生の導き手だった。

ハリー自身は、金縛りの術が解けた時から、ダンブルドアの死を確信していた。もう助からないと。
「凍結呪文」と「金縛りの術」は同じものだ。同じ単語にいろいろな訳をあてるこの翻訳者の気まぐれにはほんとうに困る。

ダンブルドアのそばに落ちているロケットに、ハリーは気づいた。
ハリーは本物のロケットを、ホキーの記憶の中で見ている。ダンブルドアといっしょに持ち帰ったこれは、明らかに本物と違う。大きさが違うし、Sの飾り文字もない。
中には紙切れが畳んで入れてあった。
「闇の帝王へ。あなたがこれを読む頃には、わたしはとうに死んでいるでしょう」「本当の分霊箱は私が盗みました。できるだけ早く破壊するつもりです」
ここには一部を書いているが、文章全体を見れば、この手紙を書いた人物は、まさか分霊箱が6個あったとは思っていない。これひとつだけだと信じていたはずだ。

R.A.Bという署名が書かれていた。
この頭文字に相当する人物の名前は、すでに「不死鳥の騎士団」で登場しているから、気づいた読者もいただろう。わたしは気づかなかったが。