ハリー・ポッターと謎のプリンス(第29章前半)

ジニーにうながされて、ハリーはダンブルドアのそばを離れた。ハリーを医務室に連れて行くようにと、ジニーはマクゴナガルに指示されていたのだ。
歩きながら、ジニーは騎士団仲間の安否を話した。27章で「誰かの死体をまたいだ」とドラコが言っていたが、それはビルのことだった。幸いビルは死んでいない。グレイバックに襲われて倒れていたのだという。ネビルも入院しているが、それほど心配は要らないらしい。

医務室に着くと、ロン・ハーマイオニー・ルーナ・ルーピン・トンクスがいた。
奥のベッドに見知らぬ顔の人物が横たわっていた。それがビルだった。
知っている呪文は全部試しが効かなかった、狼人間の咬み傷は治す方法がないとマダム・ポンフリーが説明した。
満月ではないから、ビルに噛み付いたグレイバックは変身していなかった。普通狼人間が人に咬みつくのは、変身している時だけだというのが、この物語の設定だと思う。しかしグレイバックは人を襲うのが好きで、変身していない時にも咬みついて相手を傷つける。そんな場合、咬みつかれた方は狼人間にはならないが、何かの狼的な性質を持つようになると、ルーピンは言う。それが具体的にわかるのは次の章だ。

医務室にいた人たちは、マダム・ポンフリーも含めて、まだダンブルドアの死を知らなかった。ハリーはスネイプがアバダ・ケダブラでダンブルドアを殺したことを話して聞かせた。ただ、なぜ自分がダンブルドアといっしょに天文台にいたのかは言わなかった。

不死鳥の歌が聞こえてきた。哀悼の歌だった。
しばらく聞き入っていたところへ、マクゴナガル先生が医務室へ入っていた。
ハリーの報告を聞いてのマクゴナガル、ルーピン、トンクスのやりとりは、スネイプのことだった。
「わたしたちの知らないスネイプの何かを、ダンブルドアは知っているに違いないって、わたしはいつもそう思っていた」と、トンクス。
「スネイプを信用するに足る鉄壁の理由があると、ダンブルドアは常々そう仄めかしていました」とマクゴナガル。
それぞれ、間違っていなかったことはあとでわかる。しかしこの時点では、みんながスネイプを信用しすぎたと、口々に反省している。

ダンブルドアは、数時間学校を離れるから、ルーピン・ビル・ニンファドーラを呼んで廊下を巡回するようにとマクゴナガルに指示したという。
25章でダンブルドアが「鷲の留守中に、学校を無防備の状態で放置したことが、一度たりともあると思うか?」と言っていたが、それがどういうことだったか、ここで具体的にわかったわけだ。

死喰い人がどこから入り込んだのかわからないというマクゴナガルに、ハリーが説明する。必要の部屋に「姿をくらますキャビネット」があり、それがボージン・アンド・バークスの店にあるキャビネットとつながっていると。
ロンがその説明を補強した。忍びの地図からドラコが消えたので、必要の部屋にいると見当をつけ、ロン・ジニー・ネビルが見張りに行った。しかしドラコはインスタント煙幕であたりを真っ暗にし、持ち手にだけ明かりが見えるという「輝きの手」を使って出ていった。
「輝きの手」は、「秘密の部屋」4章にチラリと登場するのだが、ここでストーリーにからんでくるとは…

ロンたちが必要の部屋を見張っていた頃、ルーナとハーマイオニーは、ハリーの指示でスネイプの部屋の前にいた。そこへフリットウィックがやってきて、死喰い人が城に入り込んだと呼び出した。スネイプはフリットウィックを気絶させ、ハーマイオニーとルーナに面倒をみるようにと言いつけて出て行った。

そのあと、塔へいく階段で死喰い人と騎士団の戦いが起こった。死喰い人のひとり、ギボンが他の死喰い人の呪文に当たって死んだ。
死喰い人たちは通路に見えない障壁をつくり、騎士団側は誰も突破できなかった。そこをスネイプだけが突破して先へ行った。これはスネイプが特別な呪文を知っていたのかもしれないし、「闇の印」を持つ者だけを通すという機能を持った障壁だったのかもしれない。

そこまでお互いに情報交換をした時、アーサー・モリー・フラーの三人が医務室に入ってきた。