ハリー・ポッターと死の秘宝(第3章)

第3章はハリーとバーノンのやりとりから始まり、ダーズリー家の三人が自宅を去るところから始まる。
ダーズリー家の三人は、ハリーを引き取ったばかりにこれまでいろいろな目にあってきた。そしてとうとう、住み慣れた自宅を去ることになった。
一年後には戻れることになるのだが、この時点ではそのことはわからない。もしかしたら永久に戻れないかもしれないという気持ちだったのではないか。

ハリーが成人する日が来てリリーの護りが破れれば、ダーズリー家の三人は危険に陥る。ハリーもキングズリーもアーサー・ウィーズリーも繰り返し説明したのだが、バーノンはなかなか納得できない。
それも無理はないと思う。とくにアーサーは、「炎のゴブレット」でダーズリー家に来たときのせりふを読むかぎり、マグル好きのくせにマグルの気持ちを推し量ることをせず一方的にまくしたてる男だ。
キングズリーの方は、バーノンにも信用されている。「マグルの洋服を着こなすコツを心得ているし、ゆったりした深い声は…」と書かれているが、それだけが理由ではあるまい。キングズリーはマグルの首相の警護をするぐらいだから、魔法界の文化を押し付けない配慮ができるのだ。アーサーにはそれが欠けている。
バーノンと違って、ペチュニアは状況を正確に理解していただろうと思う。

三人を迎えに来たのは、ヘスティア・ジョーンズとディーダラス・ディグルだった。
「ダドリーは魔法使いと魔女の姿に縮み上がって」と書かれている。ふたりは魔法使いの服装のままでダーズリー家にやってきたのだろうか。

ここでダドリーは意外な態度に出る。ここが危険だから逃げ出すというのなら、なぜハリーがいっしょに来ないのか、と言い出したのだ。
「おまえ、粗大ゴミじゃないと思う」「おまえはおれの命を救った」というダドリーのせりふは、両親にもハリーにも意外だった。「不死鳥の騎士団」でディメンターに襲われたときから、ダドリーはいろいろ考えていたのだろう。年齢的にも、両親の価値観から抜け出して自分の意見を持てる時期だ。
ダドリーとハリーは握手をして別れる。わたしにとってはけっこう感動的な場面だったので、映画でカットされたのは残念だ。