ハリー・ポッターと死の秘宝(第6章後半)

ハリーとロンとハーマイオニーは、話し合いを続けている。
ハーマイオニーは、話しながら本をどんどん仕分けしていた。彼女には、ふたりの発言をとらえて理解しながら本を分類するという、ふたつの頭脳労働を同時に行う能力があるのだ。誰にでもできることではない。
「泣き妖怪バンシーとのナウな休日」は、どちらに分けるか迷っていた。ロックハートの本だからといって、問答無用で除外するわけではないのだ。ロックハート自身は無能でも、書かれている冒険は他人が体験した事実なので、役に立つことも書かれているのだろう。

ここを出てから、まずどこへ行くのか。
ハリーは、まずゴドリックの谷へ行きたかった。しかしそれはヴォルデモートに読まれているだろうと、ハーマイオニーは推理する。残念ながらそれが正しかったことは、17章で判明する。

ハーマイオニーは、分霊箱を破壊する方法も調べていた。
こういうことは、本来ハリーの役目だろう。ダンブルドアから分霊箱についての知識を与えられたのはハリーなのだから。しかしハリーもロンも、いわゆる勉強は嫌いだ。ダンブルドアも、知識についてはハーマイオニーをあてにしていたのに違いない。
ハーマイオニーは前学年の終わり、ダンブルドアの葬儀のあと、アクシオの呪文で分霊箱についての本を呼び寄せた。本はダンブルドアの書斎の窓から飛び出して、ハーマイオニーのいる女子寮に飛んできた。
アクシオは、本のタイトルを正確に知らなくても効くのだろうか。それとも、ハーマイオニーが求めたときにはその本が女子寮に行くように、ダンブルドアが魔法をかけておいたのだろうか。

「深い闇の秘術」というのが書名だった。
分霊箱の作り方が具体的に書いてあるという。読者には明かされていないが、分霊箱をつくる手順も呪文も書かれているのだろう。
「この本は、魂を裂くことで、残った魂がどれだけ不安定になるか警告している」とハーマイオニーは言う。たった一個の分霊箱を作るだけでも、魂は不安定になるというのに、ヴォルデモートは赤ん坊のハリーを襲った時点で、すでに三回は分割している。

それぞれの分霊箱を作るときに犠牲になったのは誰か、小説でははっきりしない。
2007年7月の公式チャットで原作者は、日記-マートル、カップ-ヘプジバ・スミス、ロケット-マグルの旅行者、ナギニ-バーサ・ジョーキンズ、髪飾り-アルバニアの農民、指輪-トム・リドルSr. だと説明している。ポッター家が襲われた時、少なくとも日記・指輪・カップの三点は分霊箱になっていた。

そして、分霊箱を破壊するには、協力な魔法特性を持ったものが必要だ。ハリーが日記を破壊した時、バジリスクの牙を使ったが、それが破壊の方法のひとつだった。物理的に叩いたり引き裂いたりしても破壊することはできない。リドルの日記をジニーがトイレに流したとき、日記が新品同様で戻ってきたのは、それが分霊箱だったからだ。

そして、ジニーがあやつられたのは、分霊箱に心理的に近づきすぎたためだった。リドルの魂はジニーの中に入り込んであやつったのだ。
ダンブルドアは指輪を破壊した。「謎のプリンス」10章で、黒い石がぱっくり割れた指輪をハリーは見ている。しかし、ダンブルドアがどうやって指輪を割ったのか、ハリーは聞かなかったし、ダンブルドアも言わなかった。グリフィンドールの剣を使ったとわかるのは、この巻の15章だ。

次の日、デラクール夫妻と娘のガブリエルがやってきた。
「ハリー、ロン、ハーマイオニー、それにジニーは、それまでに、すでにフラー一家に対する恨みつらみが募っていた」と書かれているが、わたしには理解できない。モリーが三人を忙しく働かせて、三人で話し合う時間が少なくなったことはフラー一家のせいじゃない。
そもそも、「謎のプリンス」の時期に、モリーとジニーとハーマイオニーがフラーに反感を持っていた理由も理解できなかった。

アーサーが、近くの丘までデラクール夫妻を迎えに行った。ウィーズリー家には幾重にも防御魔法がほどこされていたので、直接ウィーズリー家に来ることは不可能だったのだ。
ラクール夫人のファースト・ネームがアポリーヌだとここでわかるが、夫の名前はわからない。

モリーがハリーに、誕生日はどうお祝いしてほしいかと尋ね、ハリーは「めんどうなことはしないでください」と答える。
息子の結婚式という重大事を前にしてさえ、ハリーの誕生日を忘れていないモリーには感服だ。自分のこどもの誕生日を覚えるだけでもたいへんだろうに。