ハリー・ポッターと死の秘宝(第8章前半)

翌日。結婚式が始まろうとしていた。
ハリーはポリジュース薬を飲んで、赤毛の他人になりすましていた。「親戚の多いウィーズリー一族にまぎれこませ、『いとこのバーニー』として紹介するという計画になっていた」と書かれている。ウィーズリーの親戚はみな子だくさんらしい。

「白いローブを着たウェーイターがおおぜい到着し、金色の上着を着たバンドマンたちも…」と書かれているが、この人たちは当然ハリーのことを知らない。騎士団がヴォルデモートと戦っていることさえ知らないかもしれない。
ウィーズリー家の親戚、デラクール家の親戚もやってきた。
ゼノフィリウス・ラブグッドとルーナは、近所の住人として招かれたらしい。これまで何度も誰かのせりふに登場したルーナの父だが、ハリーが本人と会うのはこれが初めてだ。
ルーナはポリジュース薬で化けているハリーを見破った。表情でわかったという。ルーナには、ほかの人が持たない能力があるようだ。

ここでロンの大おばミュリエル登場。この人も、名前だけは前巻から出ている。まわりの人物にあれこれケチをつけるのが好きだということが、登場してすぐに読者にわかる。
ビクトール・クラムも登場。フラーに招待されたという。フラーとクラムは「炎のゴブレット」以後、連絡をとりあっていたのだろう。クラムの文通相手はハーマイオニーだけではなかったのだ。
ハーマイオニーのドレス姿を見て「君はすばらしい」と声をかけるクラム。おどろいたハーマイオニーは手にしたバッグを落とし、小さいバッグが不釣り合いに大きな音をたてた。その理由は次の章でわかる。こういう何気ない伏線が、読み返すときの楽しみになる。

結婚式が始まった。
花嫁が父といっしょにバージン・ロードを歩くという習慣はマグルと同じらしい。
そして、宗教が存在しない魔法界にも、司祭のような役をする魔法使いがいる。この結婚式で司会役をしたのは、ダンブルドアの葬儀を取り仕切ったのと同じ魔法使いなのだ。
ここで、花婿と花嫁のミドルネームがわかる。ビルのミドルネームはアーサー、フラーのミドルネームはイザベルだった。
ふたりに銀の星が降り注ぐというのは、マグルの結婚式のライスシャワーにあたるのだろうか。
少しあとでわかるが、ケーキカットもある。

儀式が終わり、バンドの音楽が始まった。
ハリーたち三人がいる席に、クラムがやってきた。そしてハリーに(その赤毛がハリーとは知らずに)話しかける。クラムは少し離れたところにいるゼノフィリウスの方を睨みつけながら、あの男を知っているかとハリーに尋ねる。ゼノフィリウスが胸に下げているペンダントは、グリンデルバルトの印だというのだ。

「賢者の石」ですでに名前だけは出ていたグリンデルバルトだが、ここでやっと、どんな人物かがはっきりする。
イギリスでは悪事をしなかったが、他の国でグリンデルバルトはたくさんの人を殺した。クラムの祖父も殺された。グリンデルバルトがダームストラング校に在学していたとき、学校の壁にこの印を彫りつけたという。
あとでわかるが、グリンデルバルトがこの印を彫ったのはダンブルドアに出会う前だろう。彼は退学してからイギリスのバチルダ・バグショットを訪ねたと思えるからだ。グリンデルバルトはダンブルドアに出会う前から「死の秘宝」を知っていたと思われる。

クラムの杖を見たとたんに、ハリーは「グレゴロビッチ」が誰かを思い出した。
クラムを杖を作ったのがグレゴロビッチだった。するとヴォルデモートは、グレゴロビッチを訪ねようとしているのだ。