ハリー・ポッターと死の秘宝(第15章後半)

テントの外の五人が立ち去ったあと、ハーマイオニーはビーズバッグからフィニアス・ナイジェラスの肖像画を取り出した。
フィニアスの顔が現れると、ハーマイオニーはすぐさま呪文で目隠しをかけた。自分たちがどこにいるかをスネイプに知らせないためだ。あとで考えれば、その必要はなかったのだが。

ハリーがグリフィンドールの剣について質問したいと言うと、フィニアスはすぐに、三人の生徒が校長室から剣を盗もうとした事件のことだとわかり、自分から話しだした。
ここで、ジニーといっしょに剣を盗もうとしたのが、ネビルとルーナだとわかる。そして、スネイプが三人に与えた罰が、禁じられた森でハグリッドのしごとを手伝わせることだったこともわかる。
スネイプは罰とみせかけて、三人にダメージを与えない方法をとったのだ。

フィニアスのせりふには、ほかにも重要な情報が含まれていた。
ゴブリン製の剣は、みがく必要などない。なぜなら、ゴブリンの剣は汚れをよせつけず、自らを強化するものだけを吸収するからだ。
ハーマイオニーが「剣が最後に取り出されたのはいつでしょう?」と質問すると、フィニアスは「ダンブルドア校長が指輪を開くために使用したときだ」と答えた。

フィニアスとのやりとりは、思わぬ収穫だった。
ゴブリン製の剣は、自らを強化するものを吸収する。「秘密の部屋」でハリーがバジリスクと戦ったときハリーは剣でバジリスクの口を刺した。剣はバジリスクの毒を吸収した。だからあの剣は分霊箱を破壊できるのだ。なんという気の長い伏線だろう。

フィニアスが与えてくれたヒントについてハリーとハーマイオニーが夢中で話し合っているとき、ちょうどロケットを身につけていたロンは、疎外感を感じていた。ハリーが「三人とももっと大変な目にあっている」と言ったことを、ロンが「僕はもっと大変な目にあったいる」と聞いてしまったことが、ロンの気分をよく表している。グリフィンドールの剣で分霊箱を破壊できるとわかってハリーは喜んだが、ロンは「ろくでもない探し物が、またひとつ増えただけだ」と言う。

ロンとハリーが口論を始めた。一度始まったけんかは、どんどんエスカレートしていき、ふたりは杖をぬいた。口論が実力行使に及ぼうとしたので、ハーマイオニーは盾の呪文を使い、ふたりの間に見えない壁を出現させた。ロンが立ち去るとき、ハーマイオニーに「君はどうする?」と聞いた。
ハーマイオニーは苦しみながらも、残る方を選んだ。ほんとうはロンといっしょに行きたかっただろう。しかしハリーに協力すると約束した以上、残るべきだと理性で考えたのだ。それに、ハーマイオニーがいなかったら、ハリーはとてもひとりで任務をやりとげることはできないだろう。

ハーマイオニーは飛び出したロンを追いかけたが、しばらくして泣きながら戻ってきた。ロンは姿くらましで消えたという。ロンはまだ無免許のはずだが、無免許の姿くらましを魔法省が検知する方法はないようだ。
あとでわかるが、ロンはこのあと、すぐに戻りたいと思っていた。しかし人さらいにつかまってしまって戻れず、なんとか逃げ出したときには、ハリーたちは移動したあとだった。

ハリーはロンが投げていったロケットを首にかけ、泣きじゃくっているハーマイオニーにロンの毛布を着せ掛けて、自分のベッドに入った。