ハリー・ポッターと死の秘宝(第17章後半)

ハリーが我に返ったのは、夜明け近くだった。
ヴォルデモートの意識とハリーの意識がつながったのは昨夜のことだ。ハリーはその時のことを、夢で反復していたようだ。
ハリーは何時間もの間、正気を失ったまま、叫んだりうめいたりしていたらしい。ハーマイオニーが彼をベッドに寝かせ、彼の汗を拭って介抱していた。ふたりは元のテントに戻っていたのだ。
蛇に噛まれたハリーの腕も、ハーマイオニーがハナハッカで治療してくれていた。

チルダが蛇だったと、ハリーはハーマイオニーに説明する。
おそらくバチルダはすでに死んでいて、蛇がバチルダに化けていたのだと。
これまでにも、変身術の授業の描写などで動物を何かに変身させる場面はあった。しかし、動物が人間に変身して、人間のように行動するという場面は初めてだと思う。
こんな魔法は、ハーマイオニーも知らなかったようだ。ヴォルデモートだからこそできたことなのかもしれない。
チルダの死は、22章のラジオ放送で確認される。

蛇はハリーを殺そうと思えば殺せる状況だった。
しかし、蛇はハリーを足止めすることだけを命令されていたと、ハリーは推測する。ヴォルデモートは自身の手でとどめを刺したかったのだ。
「自分の手で殺す」ことにこだわったために、ヴォルデモートがハリーを取り逃がす場面はこのあとも出てくる。

ここで、ハリーの杖が折れたことが判明する。
ハーマイオニーが爆発呪文をかけた時、杖も折れてしまったのだ。芯がかろうじてつながっていたが、木の部分は完全に折れていた。
この杖を直そうとしてレパロの呪文をかけ、一次的に直ったように見えるがすぐまた折れてしまう描写がいやにリアルだ。

杖を修理するのは無理だと、ハーマイオニーは言う。
「覚えているかしら……ロンのこと? 自動車の衝突で、あの人の杖が折れたときのこと?」
ロンが離脱してから、ハリーとハーマイオニーはロンの名前を口にするのを避けていた。あれ以来初めて、ふたりの間でロンの名前が出たのだ。19章でわかるが、このときのハーマイオニーの声が、灯消しライターを通してロンに聞こえ、ロンが戻ってくることが可能になった。