はりー・ポッターと死の秘宝(第21章後半)

「死の秘宝」ということばが初めて登場するのがこの章。そして、「三つをを集められれば、持ち主は死を制する者となるだろう」ゼノフィリウスは言った。
この「死を制する」のほんとうの意味は、33章のダンブルドアのせりふで明らかになる。なお、「死を制する者」の原文は Master of Deathだ。

ゼノフィリウスが階下の台所に行ったので、二階のハリーたちは話し合いを始めた。
三人とも、ゼノフィリウスの話を全部信じたわけではなかった。特にハーマイオニーは「ラブグッド独特のおかしな解釈に過ぎない」と切り捨てた。ロンも、子どもの教訓のためのお伽話だと受け取っている。
ただ、三つの秘宝のうちどれが最良の贈り物かの答えが、三人三様になるのがおもしろい。

ゼノフィリウスの話の中で、マントに関してだけは真実性があるとロンが言う。ロンは魔法界で育ったから、透明マントについては何度か聞いたことがあった。普通の透明マントは、効果が長くは持たない。しかしハリーが持っているマントは、古い品物にも関わらず完璧だ。

ロンとハーマイオニーがやり取りしている間に、ハリーはさらに上の階に気を引かれて登って見た。
そこはルーナの部屋だった。天井に、ハリー・ロン・ハーマイオニー・ジニー・ネビルの顔が描かれていた。金色のインクで「ともだち」ということばが繰り返し書かれている。

絵には感動したが、ベッドや部屋のようすは変だった。ほこりが積もっていて、何週間も人が使っていないということがわかった。窓には蜘蛛の巣。ルーナはこの家にいない。
ハリーが二階へ降りると、同時にゼノフィリウスがお盆に載せた夕食を運んできた。
「ルーナはどこですか」とハリーが問い詰めた。

ハーマイオニーは刷り上がったばかりの「ザ・クィブラー」を手にとった。表紙にハリーの写真と「問題分子ナンバーワン」の文字。ハリーを応援していたはずの雑誌は、論調を百八十度変えたのだ。

ゼノフィリウスはとうとう、ルーナが連れ去られたことをうちあける。
「どこにいるのか、連中がルーナに何をしたのか、わたしにはわからない」と言う。ゼノフィリウスは娘を守るためにザ・クィブラーの論調を変えたのだ。
ハリー自身が玄関に立った時、ゼノフィリウスはどんなに驚いただろう。そして次の瞬間、魔法省に知らせようと思ったのだ。

窓の外に、ほうきに乗った人影が見えた。
ゼノフィリウスが杖を抜いた。ハリーはロンとハーマイオニーを押しのけて攻撃をよけた。ゼノフィリウスの呪文が壁にあったエルンペントのツノに当たり、部屋が半分崩れた。ハリーたちはがれきに埋まったが何とか抜け出した。
ツノについてのハーマイオニーの警告が、早くも現実になった。

玄関で、死喰い人とゼノフィリウスが言い合いをしているのが聞こえた。二階にポッターがいるとゼノフィリウスが必死に訴えるが、二人の死喰い人(トラバースとセルウィン)になかなか信用してもらえない。このやり取りから、ゼノフィリウスがルーナを取り戻すために色々努力をしてきたこと、そのためにかえって信用を失っていたことがわかる。

死喰い人とゼノフィリウスが一悶着していたおかげで、ハーマイオニーは作戦を考えることができた。
ロンに透明マントをかぶせ、三人がしっかり手を握り合う。そして、まずゼノフィリウスに忘却呪文をかけ、デブリモ(沈め)の呪文で床に穴をあけ、階下に降りる。その直後に三人で姿くらましをする。

ロンを隠したのは、彼が自宅で重病と見せかけていることがばれないため。ハリーの姿を死喰い人たちに見せたのは、ゼノフィリウスが嘘をついていないと知らせるため。
この短時間に、ロンの家族に累が及ばないように、またゼノフィリウスやルーナがひどい目に合わないように、そして自分たちは無事逃げられるようにと考えをめぐらしたハーマイオニー
ハーマイオニーが術を使う場面はどれも好きだが、作品全体を通じていちばん好きなのはここだ。