はりー・ポッターと死の秘宝(第24章前半)

ドビーは「ハリー…ポッター…」と、ハリーの名を呼びながら息を引き取った。ハリーは、もう聞こえないとわかっていても、ドビーの名前を呼び続けた。
しばらくして、まわりにビル、フラー、ディーン、ルーナが集まってきた。ビルとフラーの家に着いていたのだ。ディーンとルーナも無事着いていたことがわかった。

ここでまたハリーの意識とヴォルデモートの意識がつながったが、そのつながり方は今までとかなり違っていた。「長い望遠鏡を逆に覗いたようにヴォルデモートの姿が見えた」と書かれている。ヴォルデモートと心が繋がると傷跡が痛むことも、ヴォルデモートが何をしているかがわかることも今までどおりだが、それに飲み込まれないようになっていた。それは、ドビーを悼む気持ちのおかげだった。ドビーは命をかけてハリーを物理的に救っただけではなく、その死によってハリーを精神的にも救ったことになる。

ドビーを埋葬する場所をビルが指示し、ハリーはスコップで穴を掘り始めた。魔法使いの家にスコップがあるのはちょっと不思議だが、現代の日本の家にも時にはマッチがあるようなものか。ハリーは魔法で一瞬に穴を掘るのではなく、自分の手だけで穴を掘りたかった。それがドビーの死に報いることのように思ったのだ。
その作業によって、ヴォルデモートに心を乗っ取られなくなったと同時に、死の秘宝への妄執も消えて言った。
自分自身の妄執が消えて、ヴォルデモートがニワトコの杖にこだわっている気持ちがわかった。ヌルメンガードでヴォルデモートが誰をなぜ殺したかも。この推理の経過は書かれていない。ハリーはヴォルデモートと老人の会話から、老人がグリンデルバルトであることを推測したのだろう。そして、ダンブルドアとグリンデルバルトは決闘をしてダンブルドアが勝った。これまで何度かハリーも目にしていたダンブルドアの杖、あれこそがニワトコの杖だったのだ。

ロンとディーンが戻ってきて、一緒に穴を掘ってくれた。魔法使いの家なのにスコップが三本もあったのは不自然だが、物語上は三人で掘ることに意義があったのだからよしとしよう。
ロンが自分のソックスをドビーにはかせ、ディーンが帽子をかぶせ、ルーナが目を閉じさせるくだりは感動的だ。
四人がそれぞれドビーにことばをかけるシーンは、思わず涙ぐんでしまった。
ビルとハーマイオニーもやってきた。ビルが魔法で土をかけ、ハリーは大きめの石をその上に置いて、杖で文字を刻んだ。

墓を仕上げたあと、ハリーは初めて家の中に入った。
そこでハリーは、ジニーがミュリエル大おばのところへ移されたと知る。ウィーズリーの家族は、学校へも仕事先へも行けない状況になっている。ただし、パーシーを除いてのことだと思うが、パーシーについては皆の頭の中でもう家族と認識されていないらしく、彼のことは話に出なかった。

ここで、ビルがみんなを「忠誠の術」で守っていると説明するのだが、この貝殻の家もビル自身が守人だという。すると、家の持ち主自身が守人になれるのだ。しかしこの家に忠誠の術がかかっているのなら、なぜここに着いたとき、ハリーに家が見えたのだろう? 屋敷妖精といっしょだったからだろうか。ロンは離脱したとき、どうして貝殻の家にたどりつけたのだろう? その時期にはまだ忠誠の術がかかっていなかったからだろうか。

ビルが「一時間後ぐらいにオリバンダーとグリップフックをミュリエルのところに移せる」と言ったが、ハリーは「二人に話したいことがあるから」とそれを止める。
ハリーはオリバンダーにニワトコの杖について聞き、またグリップフックにはグリンゴッツのレストレンジ家の金庫に入る方法を相談するつもりだった。具体的には書かれていないけれど。

余談だが、「ヌルメンガード」というカタカナは奇妙に思える。Nurmengardは英語風に読めば「ナーマンガード」だし、ドイツ語風に読めば「ヌルメンガルト」になるんじゃないだろうか。